映画への愛が詰まった不朽の名作
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:フィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、サルヴァトーレ・カシオ、マルコ・レオナルディ、アニェーゼ・ナーノ
【注目ポイント】
イタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレが手がけた『ニュー・シネマ・パラダイス』は、映画への愛を余すところなく描いたヒューマンドラマである。物語は、中年期を迎えた映画監督が、自身が映画に魅了された少年時代、そして青春期の切ない恋愛を回想していく構成となっている。
イタリアは映画草創期から映画大国として知られてきた。史劇を皮切りに、1930年代にはローマに映画製作都市「チネチッタ」が建設されるなど、産業基盤が整備されていた。第2次世界大戦後も、マカロニ・ウェスタンやジャッロ(イタリア製ホラー)などのジャンル映画が国際的評価を得ていたが、1980年代に入ると制作数も質も下降線を辿っていた。そんな状況の中で本作が登場し、まさにイタリア映画復興の希望として歓迎されたのである。
本作は第42回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したのを皮切りに、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、アカデミー外国語映画賞など数多くの賞を受賞。世界的に高い評価を受けた。
物語は、ローマに住む映画監督サルヴァトーレが、かつての恩師である映写技師アルフレードの死を知るところから始まる。少年時代、“トト”という愛称で呼ばれていたサルヴァトーレは、アルフレードを通じて映画の世界に出会い、心を奪われていった。そして青年時代には、大きな恋を経験する。アルフレードの訃報を機に、彼は自らの原点を静かに振り返っていく。
なお、日本では銀座のミニシアター「シネスイッチ銀座」にて約40週間に及ぶロングラン上映が行われ、大ヒットを記録した。また劇中には『黄金狂時代』(1925年)、『白雪姫』(1937年)、『駅馬車』(1939年)、『風と共に去りぬ』(1939年)、『ローマの休日』(1953年)といった往年の名作も多数登場する。こうした作品を探しながら観ることも、本作の楽しみ方の1つだ。