世界中のクリエイターに影響を与えた幻想の映像世界
『パプリカ』(2006)
監督:今敏
キャスト:林原めぐみ、江守徹、堀勝之祐
【作品内容】
DCミニという装置で他人の夢を共有することができる近未来。精神医療研究所で働く千葉敦子は、DCミニを使ったセラピーを執り行っている。彼女は、夢の中ではパプリカと名乗り、精神疾患に悩む患者の治療を秘密裏に行っていた。
ある日、研究所からDCミニが盗まれる事件が起きる。その犯人を捕まえるため、敦子は夢と現実の世界で追いかける。
【注目ポイント】
監督を務めたのは、『パーフェクトブルー』『千年女優』などで国際的評価を得たアニメーション監督・今敏。原作は筒井康隆によるベストセラー小説。声優陣には林原めぐみ、江守徹、古谷徹、大塚明夫、山寺宏一ら、日本を代表する実力派が集結している。
『パプリカ』は今敏監督にとって最後の劇場作品となった。その独自の映像世界と緻密な演出は、まさに彼の集大成とも呼ぶべき完成度を誇る。今敏の死去の際には、『ニューヨーク・タイムズ』など海外主要メディアがこぞって追悼記事を掲載し、世界的アーティストとしての地位を証明した。
本作最大の魅力は、夢と現実が交錯する幻想的かつカオスな映像演出にある。そのコンセプトと表現は、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』(2010)と比較されることも多く、夢の中に階層構造を持たせた点や、非現実的な空間設計の手法には共通点が見られる。
実際、世界中の映画ファンや映像作家から高い評価を受けており、ノーランや『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキーなども、今敏の影響を公言している。
『パプリカ』は、米『ニューズウィーク日本版』が選ぶ「歴代映画ベスト100」において、唯一選出された日本アニメ作品であり、国際的な評価は非常に高い。
また、カナダ・モントリオールで開催されるファンタジア国際映画祭では、今敏の名を冠した「今敏賞」が設立され、現在もアニメーション部門における最高栄誉として位置づけられている。今敏の遺産は今もなお、多くのクリエイターたちにインスピレーションを与え続けている。