ハリウッドの巨匠たちに受け継がれる黒澤明の美学

『隠し砦の三悪人』(1958)

黒澤明
黒澤明【Getty Images】

監督:黒澤明
キャスト:三船敏郎、千秋実、藤原釜足

【作品内容】

 時は戦国時代。侍の真壁六郎太は、山名家との戦に敗れた秋月家に仕えていた。六郎太は雪姫と残された部下と共に、隠し砦に隠れていた。また、同じく秋月側で戦に参加していた百姓の太平と又七は、道中で薪に隠された金の延べ棒を発見する。

 六郎太は秋月家を再興するため、秋月家と同盟を組んでいる早川領への脱出を試みるが、敵の関所に阻まれていた。

【注目ポイント】

 世界的に有名な日本人の映画監督と言えば、真っ先に名前が挙がるのが黒澤明だろう。彼の作品はどれも海外で高く評価されているが、その中で『七人の侍』(1954)と並んで人気なのがこの『隠し砦の三悪人』である。

 本作で登場する百姓の太平と又七をモデルにしたのが、ジョージ・ルーカス監督のSF大作『スターウォーズ』シリーズのドロイド・C3POとR2-D2であるという話は広く知られている。太平と又七がお互いに文句を言いながら歩くシーンは、見た目は違えど、そのまま活かされていた。

 雪姫の強く気高いキャラクター像もレイア姫と重なる。また、「劣勢の将軍が生き残った数少ない部下たちと姫君を守りながら、敵陣を突破していく」というストーリーラインは『スターウォーズ』(1977~)の軸になっている。

 ジョージ・ルーカスとともに、1990年のアカデミー賞で名誉賞を受賞した黒澤明のプレゼンターを務めたスティーブン・スピルバーグも彼を師と仰いでいる。その他にも、クエンティン・タランティーノやリドリー・スコットなど名だたるハリウッドの有名監督が黒澤明の技法やスタイルに影響を受けている。
 

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