スピルバーグに影響を与えた映像技術
『ゴジラ』(1954)
監督:本多猪四郎
キャスト:宝田明、河内桃子、平田昭彦
【作品内容】
太平洋沖で、原因不明の漁船沈没事故が続発する中、唯一の生存者・山田政治が大戸島に漂着する。記者のインタビューに対して彼は「海で巨大な生物に襲われた」と証言するが、誰もその言葉を信じようとはしなかった。しかし、島に住む老人だけは語る――それは島に古くから伝わる“ゴジラ”という伝説の生物の仕業だと。
実はゴジラは海底洞窟に棲み、ひっそりと生き延びていたが、水爆実験によって住処を奪われ、復讐するかのように東京湾へと現れるのだった。
【注目ポイント】
本作の監督を務めたのは、世界的に評価される本多猪四郎。特撮は、のちに『ウルトラマン』を生み出す円谷英二が担当。日本が世界に誇る怪獣映画の原点ともいえる作品だ。
単なるモンスターパニックとは異なり、本作は戦争や核兵器への深い問題提起が込められている。ゴジラが東京を焼き尽くす場面は、第二次世界大戦における空襲の記憶を再現するかのような描写となっており、観客に強烈なインパクトを与えた。また、芹沢博士が開発した究極兵器「オキシジェン・デストロイヤー」にまつわる葛藤や苦悩には、明確な反核のメッセージが読み取れる。
特筆すべきは撮影技術の革新性だ。当時はCGが存在せず、ミニチュアセットや着ぐるみを駆使した撮影だったが、それらを用いてリアルで迫力ある映像表現に成功している。その完成度は、スティーブン・スピルバーグが幼少期に本作を鑑賞し、ゴジラの滑らかな動きに感動したと語ったほどである。
そして2023年には『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞視覚効果賞を受賞し、世界的なゴジラ人気は今なお健在。ハリウッド版でもゴジラとキングコングが共闘する「モンスター・ヴァース」が今後も続編制作を予定しており、その展開から目が離せない。