“呪いのビデオ”が生んだジャパニーズホラーの金字塔
『リング』(1998)
監督:中田秀夫
キャスト:松嶋菜々子、中谷美紀、竹内結子
【作品内容】
「呪いのビデオ」を見た者は、一週間後に死ぬ――。
そんな都市伝説の取材中、テレビ局のディレクター・浅川玲子は、ついにその呪いのビデオを目にしてしまう。真相を突き止めるため、玲子は霊的な力を持つ元夫・高山竜司に協力を求めるが、彼と息子までもが同じビデオを見てしまう。
残された猶予はわずか一週間。玲子たちは、ビデオに隠された恐るべき秘密を探り出し、呪いを解くために奔走する。
【注目ポイント】
本作は、鈴木光司の同名小説『リング』を原作に、ホラー演出の名手・中田秀夫監督が手掛けたジャパニーズホラーの金字塔である。主演は松嶋菜々子、共演には真田広之、中谷美紀、竹内結子と実力派俳優が揃い、緊迫感あふれる物語をよりリアルに引き立てている。
『リング』は、1990年代後半から2000年代にかけての「Jホラー」ブームの先駆けとして知られ、世界的にも大きな影響を与えた作品だ。特に注目されたのは、欧米ホラーとは異なる日本独自の恐怖演出である。
欧米のホラーがゾンビや殺人鬼といった“目に見える恐怖”を打倒する構造であるのに対し、ジャパニーズホラーは“目に見えない怨念”や“説明不能な恐怖”を払拭することに主眼を置いている。『リング』もその典型で、原因である「呪いのビデオ」に秘められた哀しみと怨念を読み解いていくプロセスが主軸となっている。
そのインパクトは世界にも波及し、2002年にはハリウッドで『ザ・リング』としてリメイクされ、全世界で約2億5,000万ドルの興行収入を記録。中田秀夫監督自身も続編『ザ・リング2』(2005)でハリウッドデビューを果たした。
“静かに忍び寄る恐怖”や“日常の中に潜む異常性”といった日本的感性による演出は、多くの国のクリエイターに影響を与え、以後のホラー映画の潮流を変えるきっかけとなった。
現在でも『リング』シリーズは高い人気を誇り、リメイクやスピンオフ、新作が断続的に制作されている。四半世紀を経てもなお、観る者の心に恐怖と余韻を残す、まさに“永遠のホラーアイコン”といえるだろう。
【著者プロフィール:小室新一】
埼玉県出身。映画や旅行、建築などのジャンルで主に執筆活動をしているライター。学生時代から演劇の道へ進み、映画や舞台などに出演。現在は、映画の魅力を多くの人に届ける活動をしている。特に好きなジャンルは、SFアクションやミステリー作品。“今日は残りの人生、最初の日”をモットーに、素直な感情を執筆。
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