チンピラ3人組を翻弄する最強ヒロイン
『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991)
監督:岡本喜八
キャスト:風間トオル、緒方拳、北林谷栄
【作品内容】
夏のある朝、大阪刑務所から出所したばかりの健次(風間トオル)は、仲間とともに一攫千金を狙い、紀州の山林王・柳川とし子(北林谷栄)の誘拐を計画する。計画に消極的な仲間も巻き込み、彼らは実行に移すが、思わぬ事態が発生する。人質となったとし子は一筋縄ではいかない強者だった。
和歌山県警の井狩本部長(緒形拳)の名を出すなど、予想外の冷静さと狡猾さで、逆に犯人たちを翻弄していく。いつしか事件の主導権は誘拐犯ではなく、誘拐されたはずのとし子の手に…。
【注目ポイント】
本作『大誘拐 RAINBOW KIDS』は、誘拐事件を題材にしながらも、固定観念を覆すユニークな視点と展開が魅力の痛快コメディ。1991年の公開当時から現在に至るまで、根強い人気を誇る傑作だ。
誘拐されたのは、関西財界に君臨する柳川家の老女当主・とし子。しかしこの老婆、常識外れの“最強の人質”だった。犯人たちが要求した身代金5千万円に対し、「私はそんな安うはないわ」と怒り、まさかの値上げ交渉を開始。その瞬間から物語は一気にとし子の主導へと切り替わる。
物語は次第に、「誘拐犯 vs 被害者」ではなく「柳川とし子 vs 和歌山県警」という構図に変貌。とし子は緻密な計略とカリスマ性でマスコミと警察を巻き込み、事件をコントロールしていく。巧みに組み立てられた“逆転劇”は、見る者に爽快感と驚きを与える。
特筆すべきは、終盤で明かされる真の計画と結末。その鮮やかなどんでん返しに、ただのコメディでは終わらせない深みを与えている。シリアスな題材を笑いと感動で包み込み、最終的には“人間讃歌”として心に残る一作だ。
この作品の主役は間違いなく、誘拐された老婆・とし子。北林谷栄が演じるとし子の強さ、知恵、温かさに、誰もが魅了されることだろう。事件ものにして人生賛歌。観終わったあと、きっと誰もが彼女に惚れ込むはずだ。