完璧に見えた娘の“本当の顔”に言葉を失う
『渇き。』(2014)
監督:中島哲也
キャスト:役所広司、小松菜奈、妻夫木聡
【注目ポイント】
本作は、離婚を経て心が荒んだ元刑事・藤島昭和(役所広司)が、失踪した娘・加奈子(小松菜奈)を捜し求めるなかで、彼女を取り巻く過激で歪んだ現実と対峙していく物語である。
藤島は娘を探し求める過程で、自身の父親としての無力さに打ちのめされ、復讐心から暴走し、しまいには加奈子を堕落させたきっかけとなった不良少年・松永(高杉真宙)を殺してしまう。
しかし映画のラスト、松永は加奈子の操り人形の1人に過ぎなかったことが判明する。藤島は加奈子を守るつもりが、憐れな加害者になってしまったことに気づき、愕然とするのである。最終的に加奈子の所在すら曖昧なまま物語は幕を閉じる。
優等生と思われていた加奈子は、実際には複数の男子生徒を誘惑し、盗撮・恐喝を繰り返し、死に追いやった過去を持つ冷酷な人物だった。彼女は薬物の売人、元同級生の不良少年、ホームレスの少年たちを巻き込み、殺人未遂など多くの事件の引き金を引いていたのである。
中島哲也監督が描くのは、「正義」を振りかざす大人の破綻と「純粋」すぎる少女の狂気が交錯する地獄絵図。映像、編集、音楽のすべてが高いテンションで統一されており、観る者は圧倒されざるを得ない。