観る者を試すメタ構造の衝撃
『HELLO WORLD』(2019)
監督:伊藤智彦
キャスト:北村匠海、松坂桃李、浜辺美波
【注目ポイント】
本作は、2027年の京都を舞台に、内気な高校生・直実(声:北村匠海)の前に「10年後の自分」ナオミ(声:松坂桃李)が現れることで物語が始まる。
ナオミは、事故で亡くなるクラスメイト・一行瑠璃(声:浜辺美波)を救うため、直実と共に奔走するが、現在の世界が過去の記録を再現した仮想空間“アルタラ”内であるという衝撃の事実が判明する。
さらに直実が見ていた世界もナオミによって再構成された「仮想の中の仮想」にすぎず、物語は一層深いメタ構造へと突入。ナオミは現実世界から来た“10年後の直実”ではなく、すでに死んだ直実の記憶をもとに作られた“仮想存在”であることが判明するのだ。
脚本は野﨑まど、監督は伊藤智彦。映像演出、伏線の緻密さが際立ち、終盤のメッセージ性と感情の爆発が強烈な印象を残す名作である。
特に恋愛とSFが交錯する構造は、“運命を変えたい”という普遍的欲求と、個の存在価値を問いかける哲学的テーマにまで踏み込んでおり、近年のアニメ映画でも際立つ完成度を誇っている。