ネット社会の闇を描く衝撃作
『サニー32』(2018)
監督:白石和彌
キャスト:北原里英、ピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦、音尾琢真
【作品内容】
仕事も私生活も冴えない中学校教師・藤井赤理(北原里理)は、24歳の誕生日に誘拐される。犯人は、かつて世間を騒がせた“最も可愛い殺人犯”サニーの信者で、赤理をサニーと崇め監禁するが――。
【注目ポイント】
2018年に公開された映画『サニー/32』は、2004年に発生した「佐世保小6女児同級生殺害事件」に着想を得ながらも、あくまでフィクションとして再構成されたサスペンスドラマである。
実在の事件では、当時わずか11歳の少女が同級生を凶器で襲い命を奪うという、世間を震撼させた内容だった。さらに事件後、加害少女が着ていた「NEVADA」と書かれたスウェットや感情を感じさせない無表情がネット上で過剰に注目され、「ネバダたん」として偶像化されていくという異常な現象が発生した。本作では、そうした社会の歪みとメディアの熱狂が背景として色濃く投影されている。
主人公は、新潟で中学校教員として働く藤井赤理(北原里英)。彼女は誕生日の夜、突如現れた2人組の男に拉致され、雪深い山奥の廃屋に監禁される。犯人たちは赤理こそが、かつて日本中を騒がせた“サニー事件”の加害少女だと信じ込み、その正体を暴こうとする。赤理は無理やり「サニー」として振る舞うことを強要され、次第にネット上では“伝説の殺人少女サニー”として再び神格化されていく。
信者によるライブ配信、グッズ販売、「お布施」と称した献金など、インターネット上での偶像商法がエスカレートする中、精神的に追い詰められていく赤理。そして物語の終盤、「本物のサニー」と名乗る謎の女(門脇麦)が現れ、事態はさらに混迷を極めていく。
主演の北原里英は、心身ともに追い込まれていく赤理を体当たりで演じ、従来のアイドルイメージを覆す熱演を披露。共演には、冷徹な犯人役にリリー・フランキーとピエール瀧、そして不気味なカリスマ性を漂わせる門脇麦と、実力派キャストが揃い、不穏な空気と緊張感を作品全体にまとわせている。
『サニー/32』は、ネット社会が作り出す偶像と暴力の危うさ、そして「正義」と「狂気」の境界を鋭く突く、現代的で挑戦的なサスペンスである。観る者に不快なほどの問いを投げかけながら、現代社会の闇を容赦なく照らし出している。