出演辞退のピンチを救った…代役で株を上げた俳優5選。素晴らしい演技で千載一遇のチャンスを掴んだ男たち
text by 野原まりこ
華々しく報じられる新作ドラマの発表。しかし、突如として出演者の降板トラブルに見舞われる作品も少なくない。だが、その裏では作品の窮地を救った影のヒーローが生まれていた。そこで今回は、代役で株を上げた俳優を5人厳選してご紹介する。(文・野原まりこ)
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新人俳優をスターダムに押し上げたビッグチャンス
織田裕二『東京ラブストーリー』(1991)
原作:柴門ふみ
脚本:坂元裕二
演出:永山耕三、本間欧彦
出演:鈴木保奈美、織田裕二、有森也実、江口洋介、西岡德馬、中山秀征、伊藤美紀、千堂あきほ
【注目ポイント】
90年代にトレンディドラマブームを巻き起こした、ラブストーリーの金字塔『東京ラブストーリー』。破天荒なリカと、忘れられない恋に振り回されるカンチ。2人のまっすぐで不器用な愛をこれでもかというほど詰め込んだ、今もなお色褪せない名作である。2020年にはカンチ役に伊藤健太郎を迎え、リメイクされたことでも話題になった。
「僕は君が好きだ。LOVEでなくていい、LIKEでいいからさ。嘘でもいい。それでファイト出るからさ」「カンチ、セックスしよっ!」
衝撃的なワードセンスと、観る者の心をえぐるシチュエーション。リカの無邪気でまっすぐな愛情に振り回されつつも受け止める、カンチ。鈴木保奈美から溢れ出るパッションを受け止める織田裕二の佇まいが、より一層物語を美しく見せている。
このように、今でこそカンチ役には織田裕二しかいない!と言えるが、当時、カンチ役の候補に上がっていたのは知名度・演技力共に申し分のない緒形直人だった。脚本の坂元裕二が描いたのは、原作とは違ってリカを主人公に置いた挑戦的な展開。チャレンジングな企画であったため、当時はまだまだ無名だった織田裕二が起用されたという経緯だ。
織田裕二にとっては本作の出演がターニングポイントとなり、その後次々に主演作が発表された。『東京ラブストーリー』は間違いなく、織田裕二の出世作と言えるだろう。