親友の代役を務めるドラマよりも熱い人間ドラマ

成田凌『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(2020)

俳優の成田凌【Getty Images】
成田凌【Getty Images】

【注目ポイント】

 病院薬剤師を主人公に据えた、これまでにない視点の医療ドラマとして話題となった本作。だが、その舞台裏ではドラマ以上に胸を打つ“人間ドラマ”が繰り広げられていた。

 もともと、ドラッグストア勤務の薬剤師・小野塚綾役を演じる予定だった清原翔が、撮影直前に脳出血で倒れ、無期限の活動休止を余儀なくされた。急遽その代役を務めたのが、親友でありモデル同期の成田凌だった。2人は男性ファッション誌『MEN’S NON-NO』の専属モデルとして活動していた同期で、公私ともに深い関係にある。

 清原の降板を受けて、成田は「唯一の同期として、友として、清原の回復を心から願っています」とコメントを寄せ、多くのファンの胸を打った。

 成田が演じた小野塚綾は、奨学金返済のためにドラッグストアに勤務しながら、理想と現実の間で揺れ動く青年。石原さとみ演じる主人公・葵みどりに興味を抱く謎多きキャラクターである。かつて薬剤師として高い志を持っていたが、忙しさに追われる日々の中で徐々にその情熱を失いかけており、その葛藤を抱える姿が視聴者の共感を呼んだ。

 また、成田が持つ自然体で気だるげな雰囲気が、現代の若者のリアリズムを体現し、作品に厚みとリアリティを与えている。正義感が強く破天荒なみどりとは対照的な立ち位置から、視聴者の目線に寄り添った演技を披露し、作品を陰ながら力強く支えた。

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