伝統芸能と犯罪が交差する異色の落語ミステリー

「死神はまだか」(シーズン19 第13話)

反町隆史
反町隆史【Getty Images】

ゲスト俳優:林家正蔵

【注目ポイント】

 Season19「死神はまだか」は業界特有のルールを突いたトリックだ。落語界隈の大看板である椿家團路が“死神”という演目直後に死亡する。“死神”はラストに演者が倒れて起き上がり幕引きになるが、團路はそのまま起き上がらず幕引きになりそして亡くなった。犯人は團路の弟子達5名。團路は最初から“死神”で起き上がらず本当に死んだと観客に思わせて驚かそうとしていたのだ。

 それを事前に知っていた弟子達は幕引き後に團路に毒物を注入して心不全に見せかけて殺害したのである。落語のルールを利用しながら公衆の面前で複数人による殺人というトリックは大胆不敵で狡猾でもある。

 また本作は杉下右京が落語好きという設定が活かされており、特命係でうたた寝した右京が“死神”のように蝋燭だらけの道を進む夢を見たり、演出も青木に着物を着せて落語のように説明をさせるなどかなり特殊な事を行なっている。

 このように『相棒』はトリックに凝るだけでなく他でも楽しめる要素を数多く仕込んでいる。

 近年は流石に新しく斬新なトリックが出る事は稀で人間関係や証拠からの推理がメインになっているが、古典的なものでも新技術でもどちらをやっても許せる度量と間口の広いドラマなのでこれからも果敢な挑戦を期待していきたい。

【著者プロフィール:Naoki】

1995年生まれのエンタメ企業勤務。ドラマ、漫画、ゲームなどサブカルをこよなく愛するオタクライター。自身でも作品ファンを集めたオフ会を開いたり積極的にファンコミュニティを拡大させている。記事は知らない人には分かりやすく、知ってる人にはより楽しめるを信条に活動中。

【関連記事】
『相棒 season23』はシリーズの転換点? もっとも衝撃的だった事件とは? 『相棒』ガチファンによる徹底解説&評価
史上最高の『相棒』スペシャル回は? 最も面白い神回5選。見応え抜群…後世に渡って語り継ぐべき傑作をセレクト
『相棒』史上最悪の鬱回は? 衝撃のトラウマエピソード5選。400作品以上の中から衝撃的な結末をセレクト
【了】

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!