剣に生き、執念に堕ちた亡魂

黒死牟

演じるならこの人!
~松田龍平~

松田龍平
松田龍平【Getty Images】

 黒死牟は鬼舞辻無惨の忠実な部下であり、剣士としての過去と鬼としての冷徹さを併せ持つ複雑なキャラクターだ。

 松田龍平の独特な雰囲気と抑制された演技、「無」の空気は、黒死牟の内面的な葛藤や静かな威圧感と絶妙にマッチしている。

 映画『羊の木』(2018)ドラマ『災』(WOWOW、2025)で見せた、まるで魂が半分抜けたような、でもどこか重い哀しみを背負ったあの佇まい。その雰囲気が黒死牟の内面的な葛藤や静かな威圧感を表現する。

 黒死牟は最強の剣士でありながら、弟への嫉妬と執着に囚われた亡魂。松田のあの緩やかな声、虚ろな目、そっと剣を握る手つき、それだけで、黒死牟の「かつて人間だった」悲劇がスクリーンに滲み出す。派手さはいらない。松田の静けさが、黒死牟の重厚な絶望を語る。

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