奇行と音楽の天才性を絶妙に同居させた自由人キャラ

上野樹里(野田恵)『のだめカンタービレ 最終楽章』(2009~2010)

上野樹里
上野樹里【Getty Images】

監督:武内英樹(前編)、川村泰祐(後編)
キャスト:上野樹里、玉木宏、瑛太、水川あさみ、小出恵介

 原作ファンからも「まさに本人」と絶賛されたのが、ドラマ『のだめカンタービレ』で上野樹里が演じた野田恵(のだめ)である。原作は二ノ宮知子による人気漫画。天才的なピアノの才能を持つ天然の音大生・のだめと、完璧主義の指揮者志望・千秋真一(玉木宏)との音楽と恋を描いた物語だ。

 2006年に連続ドラマとして放送が始まり、スペシャルドラマや映画へと展開される中で、社会現象とも言える大ヒットを記録した。

 なかでも注目されたのが、“のだめ”の再現度の高さである。茶髪のボブに寝癖、だぼだぼの服装、そして「ぎゃぼ!―」という奇妙な口癖まで、ビジュアルも性格もまさに原作そのもの。表情、話し方、動きのすべてが漫画から飛び出してきたかのようで、実写化にシビアな原作ファンをも唸らせることに成功した。

 さらに、シリーズを通して描かれた“のだめ”と千秋の関係性も高く評価された。玉木宏との掛け合いはテンポが良く、コミカルなやり取りからシリアスなシーンまで、自在に緩急をつけた演技は圧巻だった。

 とりわけ多くの感嘆を集めたのが、ピアノ演奏シーンのリアリティである。幼少期からのピアノ経験を活かした上野の演奏には説得力があり、観る者を惹きつけた。

 この“のだめ”は単なる再現を超え、キャラクターに新たな命を吹き込んだ稀有な実写化の傑作である。のちに別の作品で彼女を見かけても“のだめ”を思い出してしまう。それほどに強烈な印象を残したハマり役は、原作再現の到達点とも言えるだろう。

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