悪のカリスマが放つ艶とギャグの絶妙なバランス

深田恭子(ドロンジョ)『ヤッターマン』(2009)

深田恭子
深田恭子【Getty Images】

監督:三池崇史
キャスト:櫻井翔、福田沙紀、生瀬勝久、ケンドーコバヤシ、岡本杏理、阿部サダヲ、深田恭子

【注目ポイント】

 2009年に公開された実写映画『ヤッターマン』は、タツノコプロの同名アニメを原作とし、三池崇史が監督を務めた作品である。名シーンの再現に加え、随所に大胆なアレンジも施された本作の中でも、とりわけ観客の視線を奪ったのが、深田恭子による「ドロンジョ」の圧倒的な再現度であった。

 深田が演じたドロンジョは、原作ファンの期待に真正面から応えるかたちでスクリーンに登場する。象徴的な黒のボンデージ衣装やマスクはもちろんのこと、セリフ回しや細かな仕草に至るまでが丁寧に作り込まれており、「これこそがドロンジョだ」と思わせるだけの説得力を備えていた。物語の展開はさておき、深田の演じるドロンジョの存在感に引き込まれた観客は少なくなかったであろう。

 このキャラクターは、セクシーさとコミカルさを併せ持ち、悪に徹しながらもどこか憎めないという複雑な性質を有している。深田はそうした難しさを自然体で表現し、ドロンジョというキャラクターに人間味を与えることに成功している。

 映画全体としての評価は分かれるところではあるが、少なくとも深田恭子のドロンジョについては「原作を超えた」とする声が根強く存在する。公開から年月が経過した現在においても、「実写化における再現度の高いヒロイン」として、深田ドロンジョの名はしばしば引き合いに出されている。

 可愛らしさと色気、さらにはユーモアまでも内包したこの“憎めない悪役”は、原作ファンにとっても、作品に初めて触れる観客にとっても、強い印象を残すキャラクターとして記憶されている。

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