世界の終わりを予言するウサギが導く28日間の奇跡
『ドニーダーコ』(2001)
監督:リチャード・ケリー
キャスト:ジェイク・ジレンホール、ジェナ・マローン、ドリュー・バリモア、メアリー・マクドネル、ホームズ・オズボーン
【作品内容】
精神科に通う高校生・ドニー(ジェイク・ギレンホール)の前に、ある夜、銀色のウサギが現れる。ウサギから、あと28日で世界が終わると告げられたドニーの周囲では奇妙なできごとが起こり始める。
【注目ポイント】
2001年に公開されたリチャード・ケリー監督の映画『ドニー・ダーコ』は、主演のジェイク・ギレンホールにとって、キャリアを決定づける重要な転機となった作品である。そして観る者を惹きつけた最大の要因は、一度では理解しきれない複雑な筋立てと、「リバースムービー」と称される独特の構造にある。
物語は10月2日、高校生のドニーが、銀色のウサギの着ぐるみをまとった謎の存在「フランク」と出会う場面から始まる。フランクはドニーに、「世界は28日後に終わる」と不気味な予言を告げる。その直後、自宅に飛行機のエンジンが墜落。偶然ベッドにいなかったドニーは命を救われるが、ここから現実と幻覚が入り混じる奇妙な日々が始まる。
実は、冒頭で落下する飛行機のエンジンは、本来ドニーを死に至らしめるはずのものだった。つまり彼が目を覚ました世界は、事故が起こらなかった「もう一つの世界」だったのである。そこから始まる28日間は、並行世界と因果律のゆがみの中で、ドニーが世界を元に戻すために辿る旅でもあったのだ。
本作が「難解」とされるのは、タイムリープやパラレルワールドといったSF要素に加え、精神疾患の描写、宗教的象徴、思春期特有の自己探求といった複数のテーマが重層的に絡み合っているためだ。
アメリカでは劇場公開時こそ興行的に成功しなかったが、DVDリリースを機に熱狂的な支持を集め、カルト的人気作としての地位を確立。現在では、2000年代を代表する“観るたびに解釈が深まる映画”として名を馳せている。
なお、2022年には約20分の追加シーンを収録したディレクターズカット版がリリースされた。特典映像には、作品の謎と哲学的側面に迫る『デウス・エクス・マキナ:ドニー・ダーコの哲学』が収録されており、作品理解をさらに深めたいファンにとっては必見の内容となっている。