清楚系イメージを覆す大胆な変身

有村架純『ビリギャル』(2015)

有村架純
有村架純【Getty Images】

 ギャルを主題に据えた映画作品の中で、金字塔とも言えるのが2015年公開の『ビリギャル』である。そして、本作を語る上で欠かすことができないのが、主演を務めた有村架純の存在である。有村と言えば、多くの人がまず思い浮かべるのは、その柔和な笑顔と透明感に満ちた佇まいであろう。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013)や『ひよっこ』(2017)において披露した、芯のある優しさと清潔感のある存在感は、まさに彼女の代名詞となっていた。

 そのイメージを鮮やかに覆したのが、『ビリギャル』での金髪ギャル役である。本作で彼女が演じたのは、学年最下位の成績から慶應義塾大学を目指す女子高生・工藤さやか。茶髪に濃いメイク、制服を大胆に着崩した外見は、それまでの有村の清楚なイメージとは大きく異なっていた。それにもかかわらず観客に違和感を抱かせなかったのは、彼女の演技における圧倒的な説得力があったからに他ならない。

 表面的な軽薄さや反抗的な態度を体現しつつも、母親や恩師との関係性の中で見せる微細な感情の起伏には、有村本来の真摯さと誠実さが滲み出ていた。単なる「ギャル」の記号的な表現ではなく、等身大の少女としてのリアリティを宿していたことが、多くの観客の共感を呼んだのであろう。

 さらに本作は、有村にとって女優としての幅を大きく広げる契機となった作品でもある。従来の「清純派」という枠に留まらず、多様な役柄への挑戦を可能にしたという点で、キャリア上のターニングポイントと言って差し支えない。『ビリギャル』は、ギャル役への挑戦にとどまらず、有村架純という俳優の可能性を世に示した象徴的な1作であった。

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