黒幕不明のまま幕を下ろした報道ドラマ

『キャスター』(TBS系、2025)

俳優の阿部寛
俳優の阿部寛【Getty Images】

脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
出演者:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成

【作品内容】

 視聴率低迷の報道番組に就任した進藤壮一(阿部寛)は、「真実こそが世の中を動かす」と信じ、チームを再生へ導く。やがて、闇に封じられていた事件の真相に迫っていく。

【注目ポイント】

 阿部寛主演のTBS日曜劇場『キャスター』が、権力と報道の対峙を描く重厚なテーマで幕を下ろした。終盤に向けては緻密に張られた伏線が次々と回収され、父の死の真相、毒殺事件の黒幕、そして真実を伝えるという報道の矜持がドラマとして見事に昇華された。しかし、すべてが明かされたわけではない。物語の陰には、なお多くの語られなかった謎が残されている。

 中でも注目されたのが編集長・市之瀬咲子(宮澤エマ)の不審な動き。AD本橋悠介(道枝駿佑)のパソコンが押収され、最終話でそれを不正アクセスし情報を週刊誌へ流していたのが彼女だったことが判明する。しかし、その動機や背景は最後まで語られなかった。

 また、そのパソコンを密かに回収したのが、謎の清掃員・鍋田雅子(ヒコロヒー)だった。たびたび意味深な登場をしていたものの、彼女の素性や意図も明かされないままだ。

 さらに、進藤の元妻・横尾恭子(相築あきこ)が刺される事件も犯人や動機は不明。週刊誌記者・南亮平(加治将樹)が「まだ報道されていない」と語るのみで、真相は闇の中だ。

 終盤に登場した謎の男(寺西拓人)は「今度は彼女を狙うんですか?」と電話する場面が描かれたが、誰と繋がっていたのか、何のための行動なのかも伏せられていた。南が言及する「足が悪いボス」との関連を匂わせるだけにとどまっている。

 また、松原哲(山口馬木也)の死因となった火事も、誰がライターを投げたのかが明かされていない。景山(石橋蓮司)の策略が絡んでいることは示唆されたが、直接的な実行犯の描写はなく、ミステリーは未解決のまま。数々の未解決の伏線が残されたラストは続編を予感させる締めくくりとなった。

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【了】

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