蔦重を陥れる策略で視聴者をハラハラさせた
風間俊介(鶴屋喜右衛門)
【注目ポイント】
鶴屋の主人・喜右衛門(風間俊介)は言葉遣いが丁寧で、立ち振る舞いに品性を感じられるものの、腹黒い人物と見ていた視聴者は多いだろう。
地本問屋の主人たちが、蔦重(横浜流星)の快進撃に困惑する中でも、喜右衛門だけはまったく動じない。むしろ「蔦重の成功などあり得ない」と確信するかのように、微笑を浮かべる。その静かな笑みの奥には、蔦重の台頭を阻むだけの策をすでに掌中に収めているのではないかという“底知れぬ自信”が感じられた。
しかし、第25話「灰の雨降る日本橋」において喜右衛門は蔦重の才能をついに認めた。浅間山の噴火で町に灰が積もった事態に動揺する人びとを励まし、店や町のために一生懸命働く蔦重の姿に心を動かされたのだ。蔦重は灰の片付けレース中に川に落ち、這い上がると、「誰か助けてくれると思ったんですけどね」と茶目っ気たっぷりに言った。このとき初めて、喜右衛門は蔦重に優しく微笑みかけた。
風間扮する喜右衛門の笑みを見るたび、筆者は“蔦重に恐ろしいことが起きるのではないか”とハラハラしっぱなしだった。その不穏さが、風間の巧みな演技によって生まれていたことは言うまでもない。
【著者プロフィール:西田梨紗】
アメリカ文学を研究。文学研究をきっかけに、連ドラや大河ドラマの考察記事を執筆している。社会派ドラマの考察が得意。物心ついた頃から天海祐希さんと黒木瞳さんのファン。
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