小野田への誓い──決着を待つ因縁の巨悪
長谷川元副総監との対峙
【注目ポイント】
『相棒』の醍醐味のひとつは、“絶対的正義”を信条とする杉下右京と、“大局的正義”を掲げる小野田官房長(岸部一徳)との緊張感あふれる対立にある。二人の衝突はやがて劇場版Ⅱでの警察庁 vs 警視庁の対立へとつながり、シリーズの根幹を揺るがす大事件へと発展していった。
その発端のひとつが、警視庁公安部の“影の管理官”と呼ばれた長谷川副総監である。彼は公安の存在意義を高めるため、自作自演のテロ事件を企てた。しかし結果として隊員が命を落とし、その復讐に燃えた元警察官・八重樫が、警視庁幹部を人質に庁内で立てこもるという事件を引き起こす。突入の混乱の中、八重樫は長谷川によって射殺された。
右京は長谷川が犯人であることを突き止めるが、その裏で小野田は警察庁の思惑を優先し、事件を揉み消す代わりに警視庁の人事刷新を画策。警察をより強い組織に作り変えようとする小野田と、組織が弱体化しても殺人犯を裁くべきだとする右京は、決定的な対立に至る。
だがその矢先、小野田は人事で排除された元生活安全部長に殺害されてしまう。結果として、長谷川の逮捕も警視庁人事の刷新もすべて有耶無耶となった。右京は小野田の墓前に誓う。「必ず長谷川を追い続ける」と──。
その後、長谷川はシーズン10「罪と罰」で警察庁官房付として再登場し、神戸尊を自らの管轄に異動させるなど暗躍したが、それ以降は姿を見せていない。一方で小野田は、死後もなお数々の事件の背後に存在感を放ち続けており、近年も亀山が墓参りに訪れるエピソードが描かれている。
しかし、右京が長谷川を逮捕しない限り、小野田への誓いは果たされたとは言えない。未解決のまま残された因縁の巨悪との決着──それは『相棒』がこれから必ず描いてほしい、大きな宿題のひとつである。