真相が怖すぎる…実在の暗殺事件を描いた映画5選。その時、歴史が動いた…緊迫感みなぎる珠玉の作品をセレクト
暗殺事件は、時に一国の命運を変え、世界の歴史を大きく揺るがす。そんな衝撃的な実話に基づく映画は、スリルを超えて、政治的陰謀や個人の信念を深く描いてきた。今回は、実在の暗殺事件を題材にした海外映画5本をセレクト。史実の描き方や、いかにしてフィクションへと昇華させたのかを読み解いていく。(文・阿部早苗)
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ケネディ暗殺の“影”に挑んだ検事の執念
『JFK』(1991)
監督:オリバー・ストーン
キャスト:ケビン・コスナー、トミー・リー・ジョーンズ、ゲイリー・オールドマン、ケヴィン・ベーコン、ローリー・メトカーフ
【作品内容】
1963年、ダラスで遊説中のケネディ大統領が暗殺され、容疑者リー・ハーベイ・オズワルド(ゲイリー・オールドマン)も護送中に射殺される。政府の調査結果に疑問を抱いた検事ジム・ギャリソン(ケビン・コスナー)は、独自に真相究明に乗り出す。
【注目ポイント】
1991年、オリバー・ストーン監督が放った衝撃作『JFK』は、1963年にアメリカで起きたジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件を題材に、ケビン・コスナーが実在したニューオーリンズ地方検事、ジム・ギャリソンを演じた作品だ。
ギャリソン自身の著書と、ジャーナリストのジム・マースの著作をもとに、史実とフィクションを交錯させた展開が世界に大きな波紋を広げた。
映画は、1963年11月22日にテキサス州ダラスで起こったケネディ大統領暗殺事件、そしてその2日後に容疑者オズワルドがジャック・ルビー(ブライアン・ドイル=マーレイ)に射殺されるという不可解な展開から始まる。
ニューオーリンズの地方検事ジム・ギャリソンは、政府が発表した「ウォーレン委員会報告書」の矛盾に疑問を抱き、独自の再調査を開始する。彼の捜査は、軍産複合体の利権やベトナム戦争への介入、さらにはFBIやCIAといった政府機関の関与を示唆する陰謀の存在へと深く切り込んでいった。
注目すべきは、事実とフィクションが精緻に編み込まれた構成の巧みさである。とりわけ圧巻なのは、ウォーレン委員会報告書で広く知られる「魔法の弾丸」説や、グラッシー・ノール(草むらの丘)からの発砲説といった当時の主要な疑惑を、映像として大胆に再現したシーンである。
本作がアメリカ社会に与えた影響は大きく、映画が公開された翌年の1992年には「ジョン F. ケネディ大統領暗殺記録収集法」が成立。政府資料の開示に繋がった。
事件そのものについては、1964年にウォーレン委員会が「リー・ハーヴェイ・オズワルドによる単独犯行」と結論づけ、いったん幕が引かれた。1969年、ジム・ギャリソンが起こした裁判でも、被告クレイ・ショーは無罪となり、司法の場でも陰謀の証明には至らなかった。
しかし1979年、米下院暗殺特別委員会はこれらの結論に一石を投じる。「暗殺には複数犯が関与した可能性が高い」とする見解を示し、真相は依然として決着を見ていないことが明らかとなった。
そして事件から62年が経過した2025年、トランプ政権の下で、ケネディ大統領暗殺に関するおよそ8万ページに及ぶ機密文書が公開された。オズワルド単独犯説を覆す新たな証拠が明らかになるのではないかと、世界中が固唾をのんでその内容に注目した。
しかし現時点では、従来の公式見解を根本から揺るがすような決定的な記述は確認されておらず、事件の真相は依然として厚い闇に包まれたままである。