女性分析官が挑んだビンラディン追跡の10年
『ゼロ・ダーク・サーティ』(2013)
監督:キャスリン・ビグロー
キャスト:ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン
【作品内容】
2001年9月11日、アメリカを襲った同時多発テロ——いわゆる「9.11」以降、CIAはテロ組織アルカイダの指導者ウサーマ・ビンラディンの追跡に膨大なリソースを投じたが、決定的な成果は得られなかった。
そんな行き詰まりの中、パキスタン支局に派遣された若き女性分析官マヤ(ジェシカ・チャステイン)は、執念の調査の末、ビンラディンに繋がる鍵となる人物“アブ・アフメド”の存在に辿り着く。
【注目ポイント】
映画『ゼロ・ダーク・サーティ』は、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロから、テロ組織アルカイダの指導者ウサーマ・ビンラディンの殺害に至るまでの約10年間を描いた作品である。監督は、『ハート・ロッカー』(2008)で高い評価を得たキャスリン・ビグローが務めた。
CIAによる執念の捜査から、米特殊部隊による襲撃作戦に至るまでを、女性情報分析官マヤの視点を通して描写。ビンラディン追跡に関わった人々の葛藤、使命感、そして正義への問いを、鋭く浮かび上がらせていく。
本作の最大の見どころは、実際の取材に基づいて再構築された捜査の過程と、ネイビー・シールズによるビンラディン襲撃シーンである。特にクライマックスでは、音楽を排したドキュメンタリー調の演出によって、極限の緊張感が生々しく再現されており、観ていて息が詰まりそうになる。
ビグロー監督と脚本を手がけたマーク・ボールは、綿密な取材と実際の情報に基づきながら、フィクションとして物語を構築した。しかし、劇中に描かれた拷問による情報収集の場面は、国家機密漏洩問題に発展。作品は政治的論争の渦中に置かれることとなった。
なお、ウサーマ・ビンラディン暗殺は、2011年5月2日、パキスタン北部アボッターバードにて実行された。作戦名は「ネプチューン・スピア」。長年にわたり追跡されてきたビンラディンは、この作戦でついに射殺され、その遺体は海上で水葬された。