ヒトラー暗殺計画、その全貌に迫る
『ワルキューレ』(2008)
監督:ブライアン・シンガー
キャスト:トム・クルーズ、ケネス・ブラナー、エディー・イザード、ビル・ナイ、カリス・ファン・ハウテン
【作品内容】
第二次世界大戦末期、敗色が濃くなるドイツで、将校クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)は祖国の未来を案じ、アドルフ・ヒトラーの暗殺を決意。非常時の緊急作戦“ワルキューレ”を逆手に取り、歴史に残る大胆なクーデターを試みる。しかし、その計画は思わぬ運命をたどることに…。
【注目ポイント】
第二次世界大戦末期に実際に起きた、アドルフ・ヒトラー暗殺未遂事件――通称「7月20日事件」を題材に描いたのが、映画『ワルキューレ』(2008)である。
監督を務めたのは、『ユージュアル・サスペクツ』(1995)などで知られるブライアン・シンガー。主演のトム・クルーズが演じるのは、この歴史的計画の中核を担ったクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐である。
史実においては、戦局の悪化とともにドイツ国内ではヒトラー政権打倒を目指す動きが水面下で活発化していた。ドイツ国防軍の一部でも密かに抵抗運動が進められ、ついに東プロイセンの司令部「ヴォルフスシャンツェ(狼の巣)」で開かれた会議の最中、ヒトラーを標的に爆弾が仕掛けられる。
しかし爆弾は、置かれた位置のわずかな違いにより致命的な効果を発揮せず、ヒトラーは軽傷で生還。直後に計画通り発動されたクーデターも、ヒトラー生存の報によって瞬く間に失敗に終わった。首謀者であるシュタウフェンベルク大佐をはじめとする関係者たちは、ほどなくして逮捕・処刑されることとなる
本作は、ヒトラー暗殺計画の立案から実行、そして失敗に至るまでの一部始終を、史実に即して丁寧かつ緻密に描いている。脚本のクリストファー・マッカリーとネイサン・アレクサンダーは膨大な資料をもとにリサーチを重ね、歴史が動くか否か、緊迫の瞬間を再現することに成功している。
本作の見どころのひとつは、実際に事件の舞台となったロケーションで撮影が行われている点にある。会議室での爆弾設置や計画発動前の緊迫したやりとりには臨場感があり、まるでドキュメンタリーを観ているかのような気持ちにさせられる。
個人の選択が持つ重みを改めて考えさせられる作品であり、「もしこの計画が成功していたら?」と、観る者に歴史の“もしも”を問いかける価値ある1本といえるだろう。