グッチ帝国の裏側で起きた“愛と野望”の悲劇
『ハウス・オブ・グッチ』(2021)
監督:リドリー・スコット
キャスト:レディー・ガガ、アダム・ドライバー、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエック
【作品内容】
GUCCI創業者一族の一員であるマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)と結婚したパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は、やがてグッチ家の内紛に深く関わるようになり、それと同時に夫婦の関係にも亀裂が入りはじめる。愛を失い、夫に見放された彼女は、すべてを奪われる恐怖に駆られ、ついには取り返しのつかない決断を下す。
【注目ポイント】
イタリアの名門ファッションブランド「グッチ」を舞台に、かつて世界を震撼させた暗殺事件の真相に迫るのが、映画『ハウス・オブ・グッチ』である。主演を務めるのはレディー・ガガとアダム・ドライバー。監督は『グラディエーター』(2000)『ブレードランナー』(1982)などで知られる巨匠リドリー・スコットが担当した。
物語の中心にいるのは、強い野心を抱く女性パトリツィア(レディー・ガガ)。彼女はグッチ家の御曹司マウリツィオ(アダム・ドライバー)と結婚し、当初は家業に無関心だった夫にも次第に影響を及ぼしていく。やがてパトリツィアは、家族経営の中で存在感を強め、支配的な立場へと変貌していく。
かつては家族経営のもと世界的ブランドへと成長したグッチだったが、世代交代と経営方針の相違が一族内に深刻な亀裂を生み出し、対立は次第に激化していく。そこにパトリツィアの介入が拍車をかけ、内紛はやがてブランドそのものの崩壊へとつながっていった。
そして1995年、マウリツィオ・グッチはミラノのオフィス前で何者かに銃撃され、命を落とす。捜査の結果、犯行の黒幕が元妻パトリツィアであることが明らかとなり、愛憎と財産への執着から殺害を依頼したとされて1998年に有罪判決を受けた。彼女は18年間の服役を経て、2016年に仮釈放される。
この一連の事件は、栄光の裏に潜む“グッチ帝国の闇”として世界中の関心を集め、ファッション史に残るスキャンダルとなった。
映画は、サラ・ゲイ・フォーデン著のノンフィクションに基づき、主要なエピソードを抽出しつつ脚色を加えて描かれている。
単なる実録サスペンスにとどまらず、ファッション界の栄枯盛衰、人間の欲望・裏切り・愛憎といった普遍的テーマを映し出す。豪華絢爛な映像美と俳優陣の圧巻の演技、そして衝撃的な実話が交錯し、ファッション帝国の光と影を浮き彫りにした一作だ。