魂のこもった等身大の歌声
仲野太賀
【注目ポイント】
実力派俳優・仲野太賀。観客のみならず、菅田将暉をはじめ、間宮祥太朗、林遣都や勝地涼など、同業者の俳優仲間からも一目置かれる存在だ。2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で主演を務めることが決まり、もはや向かうところ敵なし。
しかし、若手時代は機会に恵まれず、悔しい思いをしたこともあったそうだ。俳優に向いていないと感じ、やめた方がいいのではないかと悶々をした日々を送ったこともあったという。
そんな彼の歌声は、これまでの生き様が表れているような、真っ直ぐで、人の心に染み込んでくるようである。高音を出す時の少し苦しそうな声や、感情のこもった太くて芯があり、落ち着くような、“ねらってない感じ”も良い。仲野太賀の歌声は、余計な力が入ってない分、人の感情をえぐる。
まずご紹介したいのが、映画『南瓜とマヨネーズ』(2017)。本作で仲野は、ミュージシャン志望の青年・せいいちを演じる。せいいちは、同棲中の彼女・ツチダ(臼田あさ美)のヒモ。才能があるのかないのかはわからないが、髭をはやして部屋でくすぶっている様子がなんともリアル。だが、彼がギターを片手に歌い出した時、ツチダが、身体を売ってまで彼を支えようとした理由が、ほんの少し理解できてしまうような――そんな“沼ボイス”が胸に響く。
さらに、若葉竜也とのセッション動画も話題に。石井裕也監督作『生きちゃった』の主題歌「夏の花」を歌う2人の歌声は、粗削りながらもどこかあたたかく、無骨な男たちの背中に不意打ちのように涙を誘われた。