禁忌から宿命へ──「血のつながり」から生まれ変わった愛のかたち

『空から降る一億の星』(フジテレビ、2002)

→韓国版『空から降る一億の星(The Smile Has Left Your Eyes)』(2018)

明石家さんま
明石家さんま【Getty Images】

脚本:北川悦吏子
キャスト:明石家さんま、木村拓哉、深津絵里、井川遥、柴咲コウ

【日本版の作品内容】

 独身刑事・堂島完三(明石家さんま)は妹・優子(深津絵里)と二人暮らしている。女子大生殺害事件を追う中、知人の誕生会で出会った片瀬涼(木村拓哉)に疑いの目を向けるが、優子は涼に惹かれていく。やがて三人の秘めた過去が絡み合い、物語は悲劇へと向かう。

【注目ポイント】

 2002年に日本で放送された『空から降る一億の星』は、北川悦吏子による脚本、明石家さんま主演の異色サスペンス・ラブストーリーだ。2018年には、韓国で『The Smile Has Left Your Eyes』としてリメイクされ、同じ原作を基にしながらも、文化背景や演出手法の違いが際立つ2作品となっている。

 日本版では、コック見習いの片瀬涼と、編集者の優子の出会いを中心に、兄・堂島刑事の視点を絡めながら、涼への疑念が深まっていく。物語の鍵は、涼と優子が実は血のつながった兄妹であるという禁断の真実。その事実が明かされることで、愛と罪が交錯し、衝撃的な結末を迎える。

 冷めたまなざしやタバコをくゆらす涼の姿、登場人物たちの心情に迫る会話劇など、静かな緊張感に満ちた演出が印象的だ。特にラストの余韻は、放送から20年以上経った今なお強烈な印象を残している。

 一方、韓国版は舞台を現代のソウルに移し、登場人物の設定を大胆にアレンジ。ムヨンはクラフトビールの醸造家、ジンガンは広告デザイナーとして登場する。二人の出会いは陶器展という洗練されたシーンに変わり、核心となる兄妹関係も「実は血縁ではない」という真相に置き換えられている。

 この変更により、物語の軸は“禁忌の愛”から“運命に翻弄される恋と人生”へとシフト。映像美と音楽を駆使した叙情的な演出、長尺による登場人物の心理描写の深さも韓国版ならではの魅力となっている。

 リメイクは、原作へのリスペクトと独自解釈のせめぎ合いにこそ、作品の面白さが生まれる。『空から降る一億の星』はその好例だろう。

【著者プロフィール:阿部早苗】

仙台在住の元エンタメニュース記者。これまで洋画専門サイトやGYAOトレンドニュースなど映画を中心とした記事を執筆。他にも、東日本大震災に関する記事や福祉関連の記事など幅広い分野で執筆経験を積む。ジャンルを問わず年間300本以上の映画を鑑賞するほどの映画愛好家。

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【了】

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