現代のミスター日曜劇場──信念を貫く男を描き続ける存在感
阿部寛
【主な日曜劇場主演作】
『新参者』(2010)『下町ロケット』(2015)『キャスター』(2025)
【注目ポイント】
日曜夜9時。テレビの前で多くの視聴者が、「また一週間、頑張ろう」と思える時間を届けてきた日曜劇場。かつては一話完結のホームドラマや人間ドラマが主流だったが、2000年代以降はスケールの大きなヒューマンサスペンスや社会派エンタメへと進化した。
この枠で最多主演回数を誇るのが、故・田村正和と木村拓哉。そして現代において、日曜劇場を語る上で欠かせない俳優となっているのが、阿部寛だ。
阿部が日曜劇場で初主演を務めたのは、2010年放送の『新参者』。人気小説家・東野圭吾原作の本格ミステリーで、初回視聴率は20%を超え、以降スペシャルドラマや映画にも展開される人気シリーズとなった。その後も『下町ロケット』(2015年・2018)、『ドラゴン桜』(2005年・2021)など、名作揃いのラインナップが続く。
なかでも『下町ロケット』では、ものづくりに情熱を注ぐ中小企業の社長を熱演。理想と現実の狭間で葛藤しながらも、信念を貫こうとする主人公の姿は、多くの視聴者の心をつかんだ。阿部寛の人間味と知的さを併せ持つ演技は、まさに日曜劇場が求める主演像そのものだった。
日曜劇場の魅力は、ただのエンタメにとどまらない。「物語の力」で視聴者の人生に深く入り込み、考えさせ、時には奮い立たせてくれる。理不尽な現実に立ち向かう主人公たちの姿は、社会の矛盾や人間の本質に問いを投げかける。だからこそ、この枠の主演には、画面越しに伝わる風格、そして芝居には深みが求められる。
阿部寛は、そうした重みのあるポジションに真正面から向き合い、作品ごとに強烈な印象を残してきた。その姿はまさに、現代の“ミスター日曜劇場”と呼ぶにふさわしい。