死を覚悟しても揺るがない、蜜璃への切ない愛の誓い

伊黒小芭内「今度は必ず君に好きだと伝える」

小芭内伊黒『鬼滅の刃』
ufotable公式Instagramより

 蛇柱・伊黒小芭内は、血に塗れた過去を背負いながらも、恋柱・甘露寺蜜璃への想いを胸に秘め続けた寡黙な剣士である。無惨との最終決戦のさなか、深手を負った蜜璃を戦場から離脱させたとき、心の奥でつぶやいたのがこの言葉だった。

 小芭内は、鬼を崇める一族に生まれ、幼い頃から過酷で不幸な宿命に縛られていた。鬼の支配から逃れるために家族は犠牲となり、辛くも生き残った小芭内は、残された親族から理不尽な罵声を浴びせられる。彼の心には、「自己の生存のために他者を顧みなかった」という罪悪感が深く刻まれていた。

 そのため、自らを「汚れた存在」と蔑み続けた小芭内。しかし、蜜璃との出会いは、そんな彼に人間らしい温もりと希望を取り戻させた。

「鬼のいない平和な世界で、もう一度人間に生まれ変われたら──今度は必ず君に好きだと伝える。」

 これは彼が過去の呪縛に囚われながらも、未来にわずかな光を託した告白だった。死を覚悟したその瞬間、ようやく素直に吐露された本心。そこには、自らの穢れを超えて蜜璃に想いを届けたいという、切実で純粋な願いが込められている。

 小芭内の言葉は、蜜璃への深い愛と、自身の贖罪の物語を象徴する。報われぬ恋だからこそ、一層胸を締めつけ、彼の人間らしさと強さを際立たせる名場面である。

【著者プロフィール:小室新一】

埼玉県出身。映画や旅行、建築などのジャンルで主に執筆活動をしているライター。学生時代から演劇の道へ進み、映画や舞台などに出演。現在は、映画の魅力を多くの人に届ける活動をしている。特に好きなジャンルは、SFアクションやミステリー作品。“今日は残りの人生、最初の日”をモットーに、素直な感情を執筆。

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【了】

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