最も医者役が上手かった俳優は? ドラマ史に残る名演5選。徹底した役づくりでリアルを体現した役者をセレクト

text by 阿部早苗

医療ドラマにおいて、医者役は作品のリアリティを左右する極めて重要な存在である。専門的な知識を自然に操る説得力や、患者に寄り添う温かさ、さらには極限状態の緊張感を演じ切る力は、俳優の力量にかかっている。数多くの名作の中から「医者役が最も上手かった俳優」5人を厳選。彼らがどのように役を体現し、視聴者の心を揺さぶったのかを詳しく掘り下げて紹介する。(文:阿部早苗)

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鋭い視線と漂わせる余裕感に原作者も絶賛

二宮和也『ブラックペアン』(TBS系、2018~2024)

二宮和也
二宮和也【Getty Images】

 医療ドラマに登場する医師たちは、時に神にも等しい存在として描かれる。そんな中、ドラマ『ブラックペアン』で二宮和也が演じた外科医・渡海征司郎と天城雪彦は、従来の名医像とは一線を画す、鋭くも魅力的なキャラクターとして強烈な印象を残した。

 シーズン1に登場した渡海征司郎は、手術ミスを犯した医師に代わって執刀し、その見返りに退職金を奪うという異色の存在。「オペ室の悪魔」と恐れられるその姿は、感情を抑えた冷徹な態度と、目だけで語るような鋭い視線によって際立っていた。

 そしてシーズン2では、同じ二宮が全く別人格の外科医・天城雪彦として再登場する。渡海と瓜二つの容姿でありながら、天城は鮮やかなグレーアッシュの髪に身を包む。オーストラリア・ゴールドコーストのハートセンターに長年勤務し、ディアブル(悪魔)と称される世界的な天才外科医。天城の手術を受けるには「シャンス・サンプル(二者択一)」と呼ばれる運試しに勝利する必要があり、その掛け金として患者の財産の半分を要求するという冷酷な一面も持つ。

 このドラマは、シーズン1、2ともに視聴率は好調だった。その人気の理由は、緊張感あふれる手術シーンと、病院内の権力争いを描くサスペンスが融合した濃密な構成にある。しかし、何よりも二宮和也という俳優の存在が、この作品を特別な医療ドラマへと押し上げたのは間違いない。

 医師でもある原作者の海堂尊氏は、「一流の外科医というのは危機的な状況に直面しても、どこか肩の力が抜けたような、余裕を漂わせている。渡海を演じる二宮さんにはそうした感じがよく出ていて」と二宮の演技を評し、「とにかく予想は遙かに超えていました」とコメントするなど、手放しで絶賛している。

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