徹底した役作りへのこだわりにスタッフも仰天
鈴木亮平『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系、2023)
医療ドラマは、時にリアリティを求められるジャンルだ。命に関わる緊迫した現場の再現、専門的な知識や用語の正確な使用、そして何より人の命を預かる者としての説得力が俳優に問われる。そうした厳しい条件のもと「医者役が上手かった俳優」として高い評価を得たのが、ドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』で喜多見幸太を演じた鈴木亮平である。
喜多見は、災害現場や事故現場に自ら飛び込み、患者の命を救うために全力を尽くす救命医。東京が創設した移動型救命医療チーム「TOKYO MER」のチーフドクターとして、常に現場の最前線に立ち続ける。どれほど危険な状況でも、「待っているだけじゃ助けられない命がある」と信じ、自らの身を顧みず人命を最優先する姿は、視聴者に強い印象を残した。
ドラマは放送当初から高い評価を受け、最終回の視聴率は19.5%を記録。第109回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では作品賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、監督賞など、主要部門を席巻した。
中でも注目されたのが、鈴木亮平の役作りへの徹底したこだわりである。医療用語の多くは極めて専門的で発音も複雑だが、それらの意味まで理解したうえで、違和感なく自然に口にしていた。その姿勢は共演者を驚かせ、現場でも高く評価された。また、手術シーンでは手の動きもすべて自身で担当し、吹き替えや編集に頼らず本物の医師の所作を再現。セリフと動作の完璧な同期は、スタッフの間でも話題となった。
同ドラマは、フィクションでありながら、まるで実在する医療チームの記録映像を見ているようなリアリティを備えている。2023年に公開された劇場版は45億円を超える大ヒット。2作目『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』もスマッシュヒットを飛ばすなど、医療モノの新たな金字塔として語り継がれるドラマとなったのは、いうまでもなく、鈴木亮平の卓抜の演技によるところが大きいだろう。