なぜこんなに人気? 日本漫画の海外実写版、最高の成功作5選。原作ファンも唸る出来栄え…高評価を得た作品をセレクト

text by 阿部早苗

日本が世界に誇る文化の一つである漫画。近年、多くの注目作が世に放たれ、国内にとどまらず海外での実写化が注目を集めている。また、海外制作ならではのスケールの大きさは原作ファンをも唸らせ、世界的ヒットを飛ばす作品も。そこで今回は、日本の漫画を原作とした海外の実写化映像作品を5本セレクトしてご紹介する。(文・阿部早苗)

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韓国・ハリウッドが惚れ込んだ復讐劇

『オールド・ボーイ』(2003)

チェ・ミンシク
チェ・ミンシク【Getty Images】

原作:土屋ガロン、嶺岸信明『ルーズ戦記 オールドボーイ』
監督:パク・チャヌク
脚本:ワン・ジョユン、イム・ジュンヒュン、パク・チャヌク
出演:チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン、チ・デハン

【作品内容】

 会社員のオ・デス(チェ・ミンシク)は突然拉致され、理由もわからぬまま15年間監禁されてしまう。突如解放された彼は、若い女性ミド(カン・ヘジョン)と共に犯人を追うが、謎の男ウジン(ユ・ジテ)が現れ、監禁の理由を5日以内に解き明かせと命を懸けたゲームを仕掛けてくる。

【注目ポイント】

 2000年代以降、日本の漫画を原作とした海外実写化作品が立て続けに制作されることになったが、ひときわ異彩を放つ作品が韓国から現れた。それが、韓国の鬼才パク・チャヌク監督によって2003年に映画化され、世界中の映画祭で絶賛を浴びた『オールド・ボーイ』だ。

 原作は、土屋ガロン(作)、嶺岸信明(画)による漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』。1996年から1998年にかけて『週刊漫画アクション』(双葉社)で連載されていた。ルーツが日本の漫画であることを知らない人も多いかもしれない。

 物語は、ある男が理由も分からぬまま15年間監禁され、突如解放されるところから始まる。彼は「なぜ自分がこんな仕打ちを受けたのか」を追い求め、次第に壮絶な復讐劇へと突き進んでいく。

 主演のチェ・ミンシクは、理不尽な運命に翻弄される中年男オ・デスを圧倒的な迫力で演じ切った。生きたタコをそのまま食べる場面など、その怪演ぶりは韓国映画史に残る名演といえるだろう。

 この作品は復讐劇でありながら、単なる敵討ちの物語ではない。被害者と加害者の境界が曖昧になっていく中で、真実が明かされたとき誰も救われない絶望的な結末が訪れる。監禁された15年よりも、その後に突きつけられる真実の方が、遥かに恐ろしく、耐えがたい。

 2013年にはスパイク・リー監督によるハリウッド版も制作され、原作と韓国映画へのリスペクトを保ちつつ、より暴力的かつスタイリッシュな演出が施された。原作漫画の静かな狂気、韓国映画の濃密な情念、ハリウッド版の鋭さ。それぞれの表現が異なる角度から作品の本質を描き出しており、いずれも原作の魅力を引き出す力作といえるだろう。

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