豊かな暮らしと心を取り戻す物語
『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(2018)
原作:五十嵐大介『リトル・フォレスト』
監督:イム・スルレ
脚本:ファン・ソング
出演:キム・テリ、リュ・ジュンヨル、チン・ギジュ
【作品内容】
恋も仕事も上手くいかず、都会の生活に疲れたヘウォン(キム・テリ)は、自然豊かな故郷へ戻る。旧友ジェハ(リュ・ジュンヨル)とウンスク(チン・ギジュ)と共に農作物を育て、季節の食事を楽しむ中で、心を少しずつ取り戻していく。
四季を通じた穏やかな日々の中、彼女は新たな春に向けて歩み出そうとする。
【注目ポイント】
忙しい日常に押しつぶされそうな日々を送っている人に、そっと手を差し伸べる映画がある。2018年、韓国で公開された映画『リトル・フォレスト』だ。癒される作品として高く評価されている。
主演はキム・テリ、監督はイム・スンレ。韓国映画『リトル・フォレスト』は、都会の生活に疲れた若い女性・ヘウォンが、自然豊かな故郷へ戻り、自給自足の暮らしの中で心を整えていく姿を描く。派手な展開や劇的な事件はない。ただひたすらに「生きること」と「食べること」が丁寧に描かれている。それこそが、この映画の魅力だ。
映画は春夏秋冬の四章構成。季節が巡るように、彼女の内面も静かに変化していく。小麦粉のすいとん・スジェビ、手作りのマッコリ、トッポギ、テンジャンチゲ、夏の涼味・コングクスなど、親しみ深い韓国の家庭料理がどれも愛情と労力を込めて調理されていく過程は、それだけで一本の映画になるほど美しい。
本作の原点は、五十嵐大介による日本の同名漫画『リトル・フォレスト』にある。2002年から『月刊アフタヌーン』で連載され、自然とともに生きる田舎暮らしを繊細に描いた、スローライフ漫画の先駆け的存在だ。2014年には橋本愛主演で日本でも実写映画化され、第65回ベルリン国際映画祭「キュリナリー・シネマ」部門にも招待されるなど、韓国版と並んで高い評価を受けている。
自然の中での生活を描いた本作は、どちらの国でも心を立て直す物語として受け入れられた。静かな森の中で紡がれる再生の物語は、日々の忙しさに飲み込まれ、日常に疲れ、自分が何者なのか分からなくなった時にそっと立ち止まり、深呼吸するきっかけをくれる作品だ。
【著者プロフィール:阿部早苗】
仙台在住の元エンタメニュース記者。これまで洋画専門サイトやGYAOトレンドニュースなど映画を中心とした記事を執筆。他にも、東日本大震災に関する記事や福祉関連の記事など幅広い分野で執筆経験を積む。ジャンルを問わず年間300本以上の映画を鑑賞するほどの映画愛好家。
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【了】