追い詰められた天才が見せた覚醒の瞬間
時透無一郎vs玉壺
時透無一郎のキャラクターが知れ渡り、強さの真髄を示すという点において上弦の伍である玉壺との対決は重要な戦いとなっていた。
最年少の柱であり、天才として知られていた時透無一郎。しかし、相手が上弦の鬼ともなれば簡単に倒すことはできず、一時は血鬼術によって水の牢に閉じ込められてしまう。絶体絶命の危機へと陥り、一度は無一郎自身も諦めてしまうが、刀鍛冶の里の小鉄によって救われる。そこで、これまでどこか無機質な印象だった無一郎は、人を思い思われる大事さを知り、ときに人は助けるために大きな力を発揮できると気づくのだ。
さらに、記憶障害だった無一郎は過去をすべて思い出す。両親との別れ、兄との悲しい最期を振り返りながら、優しさと新たな強さを取り戻していく。真の姿を見せた玉壺を相手にしても、痣を発現した無一郎は圧倒的。まさに無一郎の「無」は「無限」を意味していた。
玉壺は作中に登場した鬼の中でもかなり憎たらしい部類に入るだろう。それを無一郎は容赦のない毒舌で罵倒・挑発しながら、切り刻んでいくのだから胸がすくような思いだった。実際、最後まで恨み言をつぶやく玉壺に対し、文字通りみじん切りにしてしまう。無一郎の若干幼い面も、天才剣士な部分も十二分に示されているという点で、名バトルのひとつに数えたい。