時代設定に込められた意味
時代が大正である理由
『鬼滅の刃』の物語が描かれるのは、大正時代という日本史の中でも特異な時期だ。
江戸後期から明治にかけて、日本は開国と近代化という激動の時代を経験し、その後は第二次世界大戦を含む大きなうねりの中にあった昭和が続く。その狭間に位置する大正時代が、なぜ『鬼滅の刃』の舞台として選ばれたのだろうか。
大正時代を象徴するキーワードが二つある。「大正デモクラシー」と「大正ロマン」だ。第一次世界大戦の影響で政治への関心が高まり、国民は民主主義を求めて活発な活動を行った。自由や平等を求める声が広がり、女性の社会進出も目に見えて進展していった。
一方、大正ロマンとは、西洋文化と日本の美意識を融合させた独特のモダンな文化のことを指す。第一次世界大戦での軍需景気によって経済が潤い、街や人々の装いにも華やかさが増した、時代の明るい象徴である。
つまり、大正時代は暗く厳しい時代を抜け、平和と希望に向かって歩み出した過渡期だった。『鬼滅の刃』もまた、鬼がはびこる闇の時代から、平穏を取り戻した明るい世界への転換を描いている点で、この時代背景と響き合っている。
さらに、鬼殺隊に女性の柱が存在することも、大正という時代設定ならではの説得力を持たせている。
【著者プロフィール:小室新一】
埼玉県出身。映画や旅行、建築などのジャンルで主に執筆活動をしているライター。学生時代から演劇の道へ進み、映画や舞台などに出演。現在は、映画の魅力を多くの人に届ける活動をしている。特に好きなジャンルは、SFアクションやミステリー作品。“今日は残りの人生、最初の日”をモットーに、素直な感情を執筆。
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