騒音トラブルから広がる不穏な隣人関係

『84㎡』(2025)

カン・ハヌル【Getty Images】
カン・ハヌル【Getty Images】

監督:キム・テジュン
出演:カン・ハヌル、ヨム・ヘラン、ソ・ヒョヌ

【作品内容】

 不動産の高騰が続く韓国・ソウル。しがないサラリーマンのウソンは、すべての資金を全投入して夢のマンション購入を果たす。

 しかし、不動産バブルが崩壊して金利が上場したことで追い詰められ、配達のバイトをかけもちしたり、電気代節約のため真っ暗な部屋で過ごすなどギリギリの生活を強いられていた。そんなある日、大事な部屋の天井から騒音が響くようになった。

 イライラしつつも耐えていると、ウソンの下の階の怪しい住人から「騒音がうるさい」と苦情が来るようになる。

【注目ポイント】

 タイトルの「84㎡」とは、ソウルのマンションの平均的な広さである。そんな一般的な物件を手に入れるために全財産を投げ打ったものの、さまざまなストレスに苛まれて暴走していく主人公ウソンが哀れであり、身につまされる。

 騒音トラブルをきっかけに、近隣住民の嫌な素性が少しずつ明らかになっていく展開に加え、ウソンが一発逆転を狙って仮想通貨取引に挑むというヒヤヒヤの綱渡りも同時進行する。利確するまでの怒涛のサスペンスは、思わず笑ってしまうほどヤバいが、そんなコメディ調の流れに油断していると、騒音問題は複雑にエスカレートしていく。誰が味方で誰が敵なのかが二転三転しながら、意外な犯人と動機に行き着く。

 クライマックスでは韓国映画ならではの血みどろな泥試合が繰り広げられ、視聴者をしっかり暗黒な気持ちにさせる。

 主人公を含め、自分のことしか考えていない胸糞悪い人物ばかりが登場するため、まったくスッキリせず、最後まで鬱なムードが持続する。欲にまみれた人間たちが、タワマンヒエラルキー的な格差社会でもがく姿を描いた、笑えない喜劇である。

(文・灸 怜太)

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【了】

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