命を懸けた囮作戦が失敗に終わる

無惨と対峙するお館さま

『鬼滅の刃』
ufotable公式Instagramより

 鬼殺隊を代々束ねてきた産屋敷家。97代目当主・産屋敷耀哉は、病弱ながらも温和な人柄と鋭い洞察力を併せ持ち、柱たちから絶大な信頼を寄せられていた。彼の指揮と策略によって鬼殺隊は幾度も鬼舞辻無惨の野望を阻んできたが、ついに無惨が耀哉の前に姿を現す。

 その時、柱たちは柱稽古に励んでおり邸宅には不在──一見すれば耀哉にとって絶体絶命の状況だった。だがこれは、無惨を討ち取るために綿密に仕組まれた罠だったのである。

 産屋敷家の血筋は、無惨が鬼になったことにより呪いを受け、代々短命を宿命づけられていた。耀哉もその例外ではなく、残された短い命を無惨討伐の囮として使うことを決意する。その計画には妻・あまね、そして二人の娘も加わり、家族総出で命を懸けて協力した。

 無惨が耀哉と相対した瞬間、邸は大爆発を起こし、無惨は炎に包まれる。再生を試みる無惨の前に待ち構えていたのは、特製の毒を携えた珠世。そして岩柱・悲鳴嶼行冥が駆けつけ、渾身の力でその頸を斬り落とした。

 作戦は成功したかに見えた──だが、無惨はすでに頸の弱点を克服しており、日の光以外では滅することができない存在となっていたのである。

 この一連の出来事は、耀哉の揺るぎない覚悟と家族の献身、そして柱たちとの深い信頼関係を鮮烈に示す場面である。同時に、それを上回る無惨の生命力と不死性が、読者にも深い絶望感を与える瞬間となった。

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