「失っても、失っても、生きていくしかないんです」

悪鬼により失った婚約者

『鬼滅の刃』
ufotable公式Instagramより

 炭治郎が鬼殺隊士として初めて挑んだ任務は、あまりにも切なく苦いものだった。

 隊服に袖を通し、日輪刀を手にした炭治郎は、禰豆子を伴い現場へ向かう。そこでは毎晩、少女が行方不明になる事件が続発していた。

 現地で炭治郎は、婚約者を失い憔悴している青年・和巳と出会い、ともに鬼の捜索を始める。やがて現れたのは、体を三つに分け、沼のような血鬼術を操る鬼。苦戦を強いられるも、禰豆子の援護を受け、炭治郎は鬼を討ち取る。

 しかしその鬼は、16歳の少女を喰らうことを生きがいとし、これまでの犠牲者が身につけていた簪(かんざし)を“戦利品”のように集めていた。そこには、和巳の婚約者の簪もあった。

 和巳は悲しみと怒りのやり場を失い、「お前に何がわかるんだ!」と炭治郎にぶつける。だが炭治郎もまた、鬼に家族を奪われた者だった。

 鬼が人々から奪っていくものの重さ、残された者の行き場のない感情が、胸を締め付ける。その後、炭治郎は和巳に静かに告げる。

「失っても、失っても、生きていくしかないんです」

 その言葉には、同じ痛みを知る者だけが持つ、深い説得力があった。

【著者プロフィール:小室新一】
埼玉県出身。映画や旅行、建築などのジャンルで主に執筆活動をしているライター。学生時代から演劇の道へ進み、映画や舞台などに出演。現在は、映画の魅力を多くの人に届ける活動をしている。特に好きなジャンルは、SFアクションやミステリー作品。“今日は残りの人生、最初の日”をモットーに、素直な感情を執筆。

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【了】

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