ファンの期待を裏切った大幅な改変の裏側

『ドラゴンボール EVOLUTION』(2009)

孫悟空役のジャスティン・チャットウィン【Getty Images】
ジャスティン・チャットウィン【Getty Images】

監督:ジェームズ・ウォン
脚本:ベン・ラムジー
原作:鳥山明
出演:ジャスティン・チャットウィン、ジェームズ・マースターズ、チョウ・ユンファ、エミー・ロッサム、パク・ジュンヒョン、田村英里子、ジェイミー・チャン、関めぐみ

【作品内容】

 7つ集めればあらゆる願いが叶うというドラゴンボールを巡り、永遠の若さを得て世界征服を狙うピッコロ大魔王(ジェームズ・マースターズ)と、それを阻止する孫悟空(ジャスティン・チャットウィン)たちが壮絶な争奪戦を繰り広げる。

【注目ポイント】

 日本が世界に誇る国民的漫画『ドラゴンボール』。その魅力は、孫悟空の天真爛漫なキャラクター、仲間との冒険、そして熱いバトルにある。しかし、2009年にハリウッドで製作された実写映画『DRAGONBALL EVOLUTION』は、そのすべてを置き去りにしてしまったと言っても過言ではない。

 最大の問題は、原作からの大幅な乖離だ。映画の孫悟空(ジャスティン・チャットウィン)は、田舎育ちの素朴な少年ではなく、都会で高校生活に悩む普通のティーンエイジャー。学校でいじめられるという設定まで追加され、原作の自由奔放さは影も形もない。

 舞台も都会的で、物語は学園アクション映画のように展開。クリリンやウーロンといった仲間は登場せず、亀仙人(チョウ・ユンファ)は原作のエロじじいではなく厳格な武道家として描かれる。こうした改変は、もはや別作品と言えるほどだ。

 原作者の鳥山明氏は、この作品について「脚本があまりにも世界観や特徴をとらえていない」と辛辣な言葉を残している。さらに、実写化の脚本を手がけたベン・ラムジー氏のもとには、世界中から苦情メールが届き2016年に海外のドラゴンボールファンサイトでファンに向けて謝罪を行う事態となった。

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