生活の痕跡を残したまま消えた家族の謎

韓国・ヌルボムガーデン『ヌルボムガーデン』(2024)

チョ・ユニ
チョ・ユニ【Getty Images】

監督:ク・テジン
脚本:ク・テジン
出演:チョ・ユニ、キム・ジュリョン、ホ・ドンウォン、

【作品内容】

 亡き夫が残した新居に移住した女性が、家族の失踪と家に残る罪の痕跡に取り憑かれていくホラー映画。

【注目ポイント】

 忠清北道堤川市にかつて存在したヌルボムガーデンは、レストラン併設の住宅として営まれていたが、ある日を境に家族全員が忽然と姿を消した。建物内には食器や衣類、壁に飾られた家族写真まで当時のまま残され、“生活が途絶えた瞬間”がそのまま封じ込められている。
 
 訪れた者の中には「視線を感じた」「屋根裏から足音が聞こえた」と証言する者も多く、長時間滞在後に体調不良を訴えるケースも少なくない。周辺住民の間では「夜になると窓に明かりが灯る」と噂され、まるで家そのものが今も誰かを待ち続けているかのような不気味さを漂わせる。

 現在は建物が閉鎖され内部立ち入りは禁止されているが、深夜には道路脇に人影が佇むという報告が後を絶たない。映画ではこの“時が止まった家”をモチーフに、罪悪感と孤独が交錯する人間心理を怪談として描き、観客に記憶の連鎖や罪の継承といった普遍的な恐怖を突きつける。

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