正義の在り方を問いかける衝撃のクライマックス

『ケイン号の叛乱』(1954)

映画『ケイン号の叛乱』【Getty Images】
映画『ケイン号の叛乱』【Getty Images】

監督:エドワード・ドミトリク
キャスト:ハンフリー・ボガート、ホセ・フェラー、ヴァン・ジョンソン、フレッド・マクマレイ、ロバート・フランシス

放送日時:8月28日(木)午後1:00~

【作品内容】
 駆逐艦ケイン号に新艦長クィーグ中佐(ハンフリー・ボガート)が着任する。しかし、自らのミスを部下に押し付けるなど異常行動で信頼を失う。台風襲来時、正気を失った艦長に代わりマリク大尉(バン・ジョンソン)が指揮し危機を脱するが、帰港後、乗組員は反逆罪で軍法会議にかけられてしまう。

【注目ポイント】
 法廷劇の傑作として知られるエドワード・ドミトリク監督の名作『ケイン号の叛乱』。

 舞台は第二次世界大戦下の太平洋。物語は、副官のマリク大尉が着任したばかりのクィーグ中佐を迎え入れるところから始まる。当初、精悍で規律正しいクィーグの姿勢は、乗組員たちに好印象を与えた。だが、魚雷の曳航演習中に起きた事故をきっかけに、事態は一変する。自らの過ちを部下に押し付ける独裁的な性格が露わとなり、艦内には不信と緊張が広がっていく。やがてクィーグへの信頼は一挙に崩れ、乗組員たちの反感は高まっていった。

 さらに嵐の中で艦が危機に瀕したとき、副官マリク大尉は艦長に反抗し、自ら指揮を執る。これが「反乱」と見なされ、彼は軍法会議にかけられることになる。マリクは狂気に陥った艦長から艦を守るための正当防衛だと主張するが、軍法上は重罪。果たして彼の行為は正しかったのか。そして、クィーグ艦長の行動は本当に狂気だったのか。物語は、駆逐艦内での出来事と、その後の軍法会議で進行する。法廷シーンは、同じ出来事でも全く異なる証言が飛び交い、まさに手に汗握る攻防の連続だ。

 そして本作最大の見どころは、クィーグ艦長を演じたハンフリー・ボガートの怪演にある。規律に厳しい指揮官から、精神的に追い詰められていく姿はまさに圧巻。その演技はアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。彼のキャリアの中でも屈指の名演として高く評価されている。

 そして彼のプライドと精神の脆さが露呈するクライマックスは、まさに映画の核心を成している。結末で明かされる驚くべき真実は、正義をどの視点から見るかによって変わる、深い余韻を残す作品となっている。

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!