西部劇黄金期に誕生した異色の傑作

『ララミーから来た男』(1955)

『ララミーから来た男』【Getty Images】
『ララミーから来た男』【Getty Images】

監督:アンソニー・マン
キャスト:ジェームズ・スチュアート、アーサー・ケネディ、キャシー・オドネル

放送日時:8月29日(金)午後1:00~

【作品内容】

 弟を殺された運送人ウィル(ジェームズ・スチュワート)は復讐の旅の途上、ニュー・メキシコの町でハーブ牧場のデイヴやヴィック(アーサー・ケネディ)などに襲われる。その後、対立するハーフムーン牧場に身を寄せるが――。

【注目ポイント】
 古き良き西部劇の黄金時代を彩った傑作の中でも、一際異彩を放つのが1955年公開の『ララミーから来た男』だ。ジェームズ・スチュワートとアンソニー・マン監督の最後のコンビ作となった作品でもある。

 騎兵隊大尉ウィル・ロックハート(ジェームズ・スチュワート)は、弟を殺した犯人を捜すため、ニューメキシコにやって来る。弟を殺した連発銃をアパッチ族に売った男を探し、復讐を果たすためだ。

 しかし、ウィルが訪れた町は、冷酷な牧場主アレック・ウェイゴマン(ドナルド・クリスプ)とその狂暴な息子デイブ(アレックス・ニコル)に支配されていた。ウィルは、町にやってきて早々、ウェイゴマンの手下に襲われ、持ち物を全て焼かれてしまう。この一件をきっかけに、ウィルはウェイゴマン牧場と深く関わっていくことになる。

 それまでの西部劇では、正義感に溢れるヒーロー像を演じることが多かったジェームズ・スチュワート。しかし、本作で彼が演じるウィルは、復讐心に駆られ、時に暴力的な手段も辞さない、生々しい人間味を持ったキャラクターだ。弟を失った悲しみと、復讐への執着。その苦悩と葛藤を静かに、そして力強く演じ切っている。

 また、西部劇では初のシネマスコープで撮影された広大な荒野や峡谷の映像美は迫力があり、馬上での銃撃戦や対決シーンを一層印象的なものにしている。西部劇ファンのみならず重厚な人間ドラマを好む映画ファンにもぜひ薦めたい一作だ。

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