クラシックピアノが作り出した優美な歌声
坂井泉水(ZARD)
ーーー続いては、ZARDの坂井泉水さんです。
「坂井さんは、クラシック寄りの歌声ですね。個人的にはアンジェラ・アキさんに近いイメージです」
ーーークラシック寄りの歌声というのは、どういう声でしょうか。
「スラー(音を伸ばして滑らかに繋ぐこと)が多い歌い方ですね。『負けないで』の場合もそうですが、普通だったら休符を挟むところを滑らかに繋いで歌っている」
ーーー確かに坂井さんの歌い方は、流れている印象があります。
「はい。こういった歌い方をされる方はクラシック出身の方が多いので、クラシックピアノがルーツだったのかな、と思っています。
ただ、坂井さんの方がアンジェラ・アキさんは息をたっぷりと使ったファルセット(高音)を多様されるイメージで、坂井さんのほうがよりポップスに適応していると思います」
ーーーということは、楽器に声質が左右されるということでしょうか。
「はい。例えば、ギターの場合、音程が結構狂うんですよ。なので、ギターで曲を作っている人は、歌う時も音程が外れてしまう場合が多いんですよね。でも、ピアノの場合は音程が絶対に狂わないので、ピアノを作曲に使っている方は基本音程がいいイメージです。
ただ、音程が決まっていると、音程の正解を求めてしまって、うまく自分を表現できない場合がある」
ーーー綺麗に歌うだけではダメということですね。
「はい。やっぱり歌は表現なので、自分がないとなかなかアーティストとして生き残るのは厳しいです。
その点、坂井さんは、ご自身の繊細なパーソナリティをしっかり歌に託せていたのかなと思います」