カンヌで6分の喝采!少女の視点で80年代日本を描く

『ルノワール』

©2025「RENOIR」製作委員会
©2025「RENOIR」製作委員会

監督:早川千絵
脚本:早川千絵
キャスト:鈴木唯、石田ひかり、中島歩、河合優実、坂東龍汰、リリー・フランキー

【作品内容】
 1980年代後半、11歳の少女フキ(鈴木唯)は郊外で両親と暮らし、豊かな想像力で自由に日々を過ごしていた。大人の世界に興味を抱きつつも、病気の父と仕事に追われる母の間に生まれる溝に、フキの日常は少しずつ揺らいでいく。

【注目ポイント】
 2025年上半期、日本映画界に鮮烈な印象を残したのが早川千絵監督の『ルノワール』だ。デビュー作『PLAN 75』(2022)に続き、2作連続でカンヌ国際映画祭の公式部門に選出されるという快挙を成し遂げた。

 物語は1980年代後半の日本を舞台に、11歳の少女フキの瑞々しい視点で描かれる。闘病中の父、仕事に追われる母、そしてその狭間で揺れ動くフキ自身。彼女が見つめる家族や周囲の大人たちの複雑な感情は、時に脆く、時に優しい光を放つ。誰の心にも存在する弱さと優しさが交錯する、人間ドラマの深みを感じさせる作品だ。

 新人の鈴木唯は、オーディションで主役に抜擢され、まるでスクリーンに息づくかのような自然な演技を披露し、石田ひかりやリリー・フランキーらベテラン俳優陣も少女の繊細な心の動きを丁寧に引き立てていた。

 映画の舞台である80年代後半の日本を、美術や衣装、街並みの細部まで丁寧に再現され、ブラウン管テレビや当時流行のファッション、そして少し埃っぽいアパートの空気感などが懐かしさと確かなリアリティをもたらしている。

 カンヌ国際映画祭で6分間にわたるスタンディングオベーションを受けたことは、この作品が持つ感動の深さが国境を越えて人々の心を動かした証といえるだろう。

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