坂元裕二脚本が胸を打つ…人生をやり直す切実なラブストーリー
『ファーストキス 1ST KISS』
監督:塚原あゆ子
脚本:坂元裕二
キャスト:松たか子、松村北斗、吉岡里帆、森七菜、YOU
【作品内容】
夫を事故で亡くしたカンナ(松たか子)は、倦怠期で不仲だった夫・駈(松村北斗)への想いを抱えながら第二の人生を模索する。だが過去へ戻れる手段を得て、出会う直前の駈と再会。改めて愛を自覚した彼女は、未来の事故から夫を救おうと決意する。
【注目ポイント】
2025年上半期に公開された映画の中で、とりわけ多くの観客の心をつかんだのが『ファーストキス 1ST KISS』(2月7日公開)だ。脚本は『花束みたいな恋をした』『怪物』などで知られる坂元裕二、監督は塚原あゆ子。実力派のタッグが描き出したのは、“もう一度恋をする”という切実で切ないラブストーリーである。
主人公は、夫・駈(松村北斗)を事故で亡くしたカンナ(松たか子)。倦怠期を経て不仲なまま時を過ごした二人だったが、突然カンナは過去へとタイムスリップし、駈と出会う直前の世界に戻ってしまう。再び彼と向き合う中で、カンナは自分がいかに彼を愛していたのかに気づき、未来を変えたいと願う。ファンタジーとリアリティを巧みに織り交ぜ、喪失と再生を描いた物語は、幅広い世代の胸を打った。
出演者も実に豪華だ。松たか子と松村北斗の化学反応はもちろん、吉岡里帆、森七菜、リリー・フランキー、YOU、竹原ピストルらが物語に厚みを加えている。それぞれの演技が繊細に交錯し、坂元脚本ならではの濃やかな会話劇を際立たせているのも本作の大きな魅力だ。
公開直後から注目度は高く、オープニング3日間で動員17万4,000人、興行収入2億5,400万円を記録。その後も勢いは衰えず、公開15日間で動員70万人、興収10億円を突破。さらにロングランヒットとなり、最終的には動員197万人を超える大ヒットとなった。
観客の共感を集めた理由は、単なる恋愛映画ではなく、「人生の選択」「もう一度やり直せるなら」という普遍的な問いかけが込められていたからだろう。
誰もが持つ“あの時こうしていれば”という思いを映し出す。本作はまさに、2025年の映画シーンを語る上で欠かせない一作である。
【著者プロフィール:阿部早苗】
仙台在住の元エンタメニュース記者。これまで洋画専門サイトやGYAOトレンドニュースなど映画を中心とした記事を執筆。他にも、東日本大震災に関する記事や福祉関連の記事など幅広い分野で執筆経験を積む。ジャンルを問わず年間300本以上の映画を鑑賞するほどの映画愛好家。
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