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1970年代のハリウッドは映画界にとって特異な時代だった

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1960年代後半になると、ハリウッドには劇的な変化が起こっていた。スタンリー・キューブリック監督のSFアドベンチャー映画『2001年宇宙の旅』(1968)や、アーサー・ペン監督の『俺たちに明日はない』(1967)といった作品は、映画スタジオが主導する制限付きの映画作りでは到底実現不可能な、型破りな魅力を放っている。

当時は新しい才能が次々と現れ始め、ヨーロッパや、アジアでも影響力のある映画作りが行われ始めていた。コッポラは、映画監督の中で重要な人物であることは確かだが、映画『ゴッドファーザー』の公開以前は、大きな成功を収めていたわけではない。しかし、作家マリオ・プーゾの『ゴッドファーザー』を基に、コルレオーネ一族を深く掘り下げる作業を経て、力強い傑作を生み出すことで偉大な映画作家へと変貌していった。

とはいえ、映画製作の歴史がこれまで何度も証明しているように、どんな映画も監督の力量だけで成功することはない。熟練したベテラン映画監督であれば、俳優から力強い演技を引き出すことが可能だが、脚本や、演出自体のレベルを上げることができる俳優が揃う必要がある。

また、俳優陣の確保は、ハリウッドで有名な俳優を起用すれば上手くいくというものではなく、スーパースターを地味な役柄に起用してしまうと、むしろ邪魔になる場合もある。

ドン・ヴィトー・コルレオーネを演じた俳優マーロン・ブランドを除き、映画『ゴッドファーザー』の出演者の大半は、有名ではなかった。アル・パチーノ、ジェームズ・カーン、ダイアン・キートンなどは、俳優として頭角をあらわす以前であり、スターとしての地位はまだ確立されていなかったのだ。

現代において、オリジナルと匹敵する『ゴッドファーザー』のリメイクを実現するためには、マーロン・ブランドのような年季の入った大スターに加え、後にハリウッドの屋台骨を支えることになる未来のスターを多数発掘しなければならない。その点を踏まえると、本作をリメイクすることの困難がうかがえる。

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