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スペインの悪徳大富豪から金を騙し取る痛快コメディー

『コンフィデンスマンJP 英雄編』(2022)

長澤まさみ(第68回カンヌ国際映画祭より)
長澤まさみ第68回カンヌ国際映画祭よりGetty Images

監督:田中亮
脚本:古沢良太
キャスト:長澤まさみ、東出昌大、小手伸也、小日向文世、松重豊、瀬戸康史、城田優、江口洋介
テレビドラマ版:『コンフィデンスマンJP』2018/4/9~6/11(月曜21:00~)
製作局:フジテレビ

【あらすじ】

悪しき人物から騙し取った美術品を貧しい人々を救っていた英雄「ツチノコ」。その称号を受け継ぐ、三代目ツチノコが死亡する。ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)の3人のコンフィデンスマンたちは、称号「ツチノコ」の座をかけ、スペイン・マルタ島を舞台に真剣勝負を始める。しかし、ターゲットに近づく3人の元に、警察やインターポールの捜査の手が迫り…。

【注目ポイント】

年齢不詳、正体不明の主人公・ダー子(長澤まさみ)と筆頭に、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)、五十嵐(小手伸也)の4人のコンフィデンスマンと呼ばれる信用詐欺師チームが、悪徳大富豪たちをターゲットに、あらゆる手段を使って根こそぎ金を騙し取る痛快コメディーだ。

ドラマ版は、フジテレビの「月9枠」で、満を持して放送されたものの、視聴率はただの1度も2桁台に乗せることができず、平均視聴率は8.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低迷した。それにもかかわらず、最終回を前に映画化がアナウンスされ、“自爆行為”として世の失笑すら買っていた。

ところが、翌年に公開された映画版『コンフィデンスマンJP ロマンス編』は、初週の土日2日間で動員28万4,000人、興行収入22億円を突破し、2020年には、第2弾『コンフィデンスマンJP プリンセス編』、2022年には、第3弾『コンフィデンスマンJP 英雄編』とシリーズ化され、その勢いは海を越え、中国や韓国でもリメイクされた。

ドラマ版が大コケしながらも、映画版は大ヒットするという稀有なケースとなった作品だ。その背景には何があったのか。

本作の脚本を務めた古沢良太のシナリオには、コメディー要素が多分に含まれており、主にラブストーリーを軸としたフジテレビの「月9枠」のイメージとはかけ離れていた。

それにより視聴者から敬遠したことも一因だが、そもそも当時の「月9枠」は視聴率6%台に沈むなど、まさに底といえる状態で、その枠自体が数字を持っていない冬の時代だったという不運もあった。

皮肉なことに、『コンフィデンスマンJP』が放送された次クールから「月9枠」は視聴率2ケタ台に乗り、その復活の兆しをつくったのが同作ともいえる。その後はシリーズ化され、映画版は3作製作されたほか、スペシャルドラマ、スピンオフドラマなども製作されている。

作品のスケールも、回を追う毎にスケールアップ。『コンフィデンスマンJP 英雄編』ではマルタ島が舞台となっている。新型コロナの影響で、撮影は国内で行われたものの、映画版3作での興行収入は100億円に迫るなど、元々がテレビドラマであったことをも忘れさせるような娯楽作として、さらなる続編も期待されている。

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