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女性の憧れを詰め込んだ宝石箱のような映画
原作者がオードリー・ヘップバーンのキャスティングに不満

『ティファニーで朝食を』(1961)


出典:Amazon

原題:Breakfast at Tiffany’s
製作国:アメリカ
原作:トルーマン・カポーティ
監督:ブレイク・エドワーズ
脚本:ジョージ・アクセルロッド
キャスト:オードリー・ヘプバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール、バディ・イブセン、マーティン・バルサム、ミッキー・ルーニー

【作品内容】

ニューヨークのアパートで暮らす美しい女性ホリーは、金持ちの男に貢いでもらうことで生活している。そして金持ちと結婚して玉の輿に乗ることを夢見ている。ある日、ホリーの部屋の隣に作家を夢見る男、ポールが越してくる。ポールは次第に自由気ままでミステリアスなホリーに惹かれていく…。

1960年のニューヨークを舞台に、自由気ままに生きる美女ホリー(オードリー・ヘプバーン)と彼女に惹かれる作家ポール(ジョージ・ペパード)の愛を描いたロマンティックコメディー。

【注目ポイント】

女優のオードリー・ヘプバーン
オードリーヘプバーンGetty Images

原作を手がけたのは、10代から物書きとして活躍した天才小説家、トルーマン・カポーティ。『ピンク・パンサー』シリーズなどのコメディー作品を数多く手がけたブレイク・エドワーズにメガホンによって製作された名作中の名作だ。

主人公は言わずと知れた“20世紀最高の女優”の1人、オードリー・ヘプバーンが務め、彼女の代表作の1つとなった。主題歌の「ムーン・リバー」も大ヒットし、アカデミー歌曲賞を受賞した。

清純派女優だったヘプバーンが奔放に生き、愛人生活を送る女性を演じたことは、当時の米国映画界において、エポックメーキングな出来事として語られ、彼女の女優像のみならず、米国全体の女性の価値観にも影響を与えた。

しかし、55年後の2016年に公開されたドキュメンタリー映画『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』(原題『Crazy About Tiffany’s』)において、『ティファニーで朝食を』の主役には、もともと別の女優が候補に挙がっていたことが明かされた。

その女優とは、米国女性のセックスシンボルとして活躍していたマリリン・モンローである。仮にモンロー主演の『ティファニーで朝食を』が製作されていれば、本作のイメージは一変していただろう。

ヘプバーン特有の上品さと魅力がなければ、作品は全く別のものになっていたに違いない。本作を通して、彼女はティファニーの顔になり、多くの女性たちは、彼女によって象徴された、洗練され教養に富んだブランドイメージに憧れたのだ。

一方、カポーティによる原作では、ホリーが娼婦であることを示すかなり露骨な表現が散見できる。彼は、ホリー役として、個人的に親交のあったモンローを望んでいた。

モンローはホリー役を演じることに当初関心を示していたが、プロデューサーが難色を示した。ホリー役にはもっと芯の通った強い女性が適役と感じていたのだ。さらに、モンローのセリフ覚えの悪さは映画界では有名であり、遅刻癖もあることで、モンローの主役起用はリスクが高いという結論に至った。

また、セックスシンボルのイメージを嫌悪していたモンロー側から断りがあったという説もある。かくして、カポーティが望んだモンロー主演の『ティファニーで朝食を』は実現しなかった。

一方、ヘプバーンは出演の条件として、自分が演じる役が娼婦だという事実をやわらげるように、脚本の一部の変更を求めた。脚本を担当したジョージ・アクセルロッドは、その要求を飲み、マイルドな表現に書き換えた。

結果として映画は、カポーティの原作とは異なる、夢見る女性のロマンティックなラブストーリーとして生まれ変わり、より親しみやすい物語として大ヒット。カポーティの懐も潤うことになったが、内面では忸怩たる思いを抱いていたのかもしれない。

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