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余韻に浸るまでがセットのエモい恋愛映画

『ちょっと思い出しただけ』(2022)


出典:Amazon

監督:松居大悟
脚本:松居大悟
出演:池松壮亮、伊藤沙莉、大関れいか、屋敷裕政(ニューヨーク)、広瀬斗史輝、成田凌、市川実和子、神野三鈴、鈴木慶一、國村準、永瀬正敏、尾崎世界観

【作品内容】

照生(池松壮亮)は怪我でダンサーを諦め、照明の仕事に就いていた。一方、タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)は、目的地に向かう途中に劇場前で車を停めた際、どこからか聴こえてくる足音に吸い込まれる。そこには、ステージで踊る元恋人・照生の姿があった。

『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画をつくったら』の松居大悟監督が、ロックバンド・クリープハイプの尾崎世界観が作曲した「Night on the Planet」に触発され制作。2021年・第34回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、観客賞を受賞。

【注目ポイント】

女優の伊藤沙莉
女優の伊藤沙莉Getty Images

本作は、池松壮亮演じる主人公・照生の誕生日である7月26日を2021年から1年ずつ遡っていく斬新な進め方で、別れた後から始まり、出会った頃へと物語が進み、二度と戻らない日々が思い返されていく。

本作の魅力の一つは、きわめてリアルに描かれる照生と葉の会話だろう。特に車内での静かな言い合いは、「もういい」「なにが」などを繰り返し、傍から見たらなんの喧嘩をしているのかわからないにもかかわらず、両者が織りなす空気感に目が惹きつけられる。

さらに、別れを描くシーンでは、一般的な恋愛映画であれば、「待てよ!」と追いかける所だが、照生は追いかけない。そこで葉が「なんで追いかけてこないんだよ」とひとり呟くシーンはもどかしさも感じ、胸をギュッと締め付けられる。

さらに、照男の朝の体操や、観葉植物に水をやる何気ない習慣は、過去を遡ることによって深い意味を帯び、美しい伏線の回収にもなっている。時系列を逆にする構成が功を奏し、終わった後の余韻に浸れる作品となっている。

内容は全く異なるが、『花束みたいな恋をした』が刺さった方には是非観て欲しいエモい一本だ。

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