過激な濡れ場をこなした俳優に脱帽
切なさに胸が締め付けられる
『愛の渦』(2014)
監督:三浦大輔
脚本:三浦大輔
出演:池松壮亮、門脇麦、滝藤賢一、中村映里子、新井浩文、三津谷葉子、駒木根隆介、赤澤セリ
【作品内容】
マンションの一室に集まった男女。ニートや女子大生、サラリーマン、保育士など、普通に生活していたら交わらない彼らの目的は、セックスをすること。むき出しの裸は、心まで解放させる。次第に、見ず知らずの男女の中には、好意や嫌悪などの感情が渦巻き…。
【注目ポイント】
池松といえば、濡れ場を連想しないだろうか。これまでも、数々の映画で女優との濡れ場を演じてきた。その中でも、この作品は群を抜いている。
マンションの一室に集められた、見ず知らずの人たち。全員、目的は情事を重ねること。
誰かが動き出すまでの沈黙した気まずい空気、お互いの視線を盗み見る仕草など、自分もその場にいるような一体感を感じてしまう。逃げ出したいような、でもこの先に起こることを期待している自分もいるような、なんとも言えない感情にさせられる。
張り詰めた空気の中、1人の男が四つん這いで這うように動き出すとタオルが落ち、思わずプッと吹き出す女性。その出来事から、小石を落とした水面のように波紋が広がっていく。
内側に秘める欲が噴水のように一気に飛び出した瞬間、男の笑顔はゾッとするほど気持ち悪く、本能しかない動物に成り下がる。その様子は、服を着て歩いている人間が裸になることで、本来の自分に戻ることを示唆している。
本作で池松は、親の仕送りを使ってまで参加するクズニートの役を演じている。
その表情からは、これから起こることに期待を抱いているようには見えない。彼は、全編を通して無表情なのだ。
しかし、表情は乏しいながらも、呼吸や声の出し方からは、心の揺れや葛藤が透けて見える。その佇まいは小動物のようでもあるが、情事のシーンになると、心の中に溜め込んでいた欲が一気に溢れ出る様子が見て取れる。
心のネジがぶっ飛んでいる。でも生きている。どうしようもなく生きづらい裸の青年が一晩で成長し、そしてもとの日常に戻っていく切ない様子をぜひ味わってみてほしい。