ブラジルの貧民街に暮らす人々をキャストに起用
優れた映画技法でストリートの匂いを再現
『シティ・オブ・ゴッド』(2002)
製作国:ブラジル
監督:フェルナンド・メイレレス
脚本:ブラウリオ・マントヴァーニ
キャスト:アレクサンドル・ロドリゲス、レアンドロ・フィルミノ、フィリップ・アージェンセン
【作品内容】
本作は、2002年にブラジルで公開された、パウロ・リンスによる同名小説を基に映画化された作品だ。
物語は「シティ・オブ・ゴッド」と呼ばれるブラジル・リオデジャネイロの貧民街を舞台に、記者の青年ブスカペの回想から始まる。
1960年代後半、銃による強盗や、殺人が絶え間なく続いていた。そこでは3人のチンピラ少年が幅を利かせており、ギャングに憧れる幼い少年リトル・ダイスは、仲間と共に、モーテル襲撃に加わる。
そこで彼は初めての人殺しを経験し、そのまま行方をくらます。一方、3人組の一人を兄に持つ、少年ブスカペは事件現場で取材記者の仕事ぶりに触れ、カメラマンを夢見るようになる。
そして時が経ち、70年代に入ると、名をリトル・ゼと改めた少年リトル・ダイスは、“リオ最強のワル”となって街に舞い戻ってきた…。
【注目ポイント】
映画産業においては辺境の地といってもいい、南米・ブラジルで生まれたこの映画は、2002年のカンヌ国際映画祭でお披露目され、世界の映画人に衝撃を与えた。また、2004年アカデミー賞では、監督賞など4部門にノミネート。その他多数の映画祭で数々の賞にノミネート、受賞を果たしている。
2000年代以降に制作された叙事詩的な犯罪映画の最高峰として挙げられる本作は、ブラジル・リオデジャネイロのファベーラという貧民街に暮らす人々の、過酷な日常が描かれている。
若き主人公達は、時には狡猾な手段で、時には残酷であることも辞さず、厳しい現実を生き抜いていく。一方、生き生きと、暴力的な生活を満喫する、倫理のタガが外れた登場人物の狂った所業も描かれる。
この作品では、中年マフィアの悲哀を描くマーティン・スコセッシの犯罪映画とは異なり、若いキャラクター達にスポットライトが当たっているのが特徴だ。
ギャングの日常を赤裸々に描くドキュメンタリータッチの撮影方法、時間軸と視点を自在に操る巧みな編集によって、目眩がするほどの臨場感を表現。映像のリズム、ストーリー構成などに、映画『グッドフェローズ』からの影響を見出すことができる。
とはいえ、スコセッシのモノマネにとどまらず、そこに独創性を付け加え、ユニークかつ大胆な犯罪映画をものにした、フェルナンド・メイレレス監督の手腕は驚くべきものだ。
リアルさを増すため、実際に現地で暮らす一般の人々を多数キャストに起用しているが、過酷なストリートに生きるアマチュアだからこそ醸し出せる、演技を超えた存在感が、フィルムに刻み込まれているという点も、本作を傑作にしている要因の一つだろう。